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Lovely Prince

それほど千草の幸せを考え、望んだ京だから、その愛が千草に届いてその心が少しずつ癒えていった。
京はそのまま思い出されなかったら友人のまま居続ける事も覚悟していただろうが、そんな京と再び出会った時から千草が癒えるのは時間の問題だったと端から見ると思える。

京が居なかったら今の千草がないように、すべては今に辿り着く為にあったんじゃないかとさえ思う。
だって京は千草のピンチに一番に駆けつけた人だし、壊れた時にそばで支えた人だし。
そんな二人が再会出来たのも奇跡的で、その結び付きの強さが感動的だ。

京が居るから今の千草があるように、もしかしたら京だって千草が居たから京で居られるのかもしれない。
今ではすべてが必然に思えて、切り離せない、掛替えのない存在ってこういう事だと思う。

どんな事が起こっても。
離れないし、離れられない。

そこまで出来る京がすごいとか、そこまで信頼できる千草がすごいとかじゃなく。
運命に巻き込まれ、必然的に引き寄せられ、そうなるべき相手に出会っただけなのだ。

里久は、自分もそんな相手と出会えたらいいなと思った。


黒川と何処かへ消えていた誠は、人や荷物を増やして帰ってきた。

「お前、人に待ってろって言っといて何する気だよ」

待っている間にちゃっかり千草と仲直りした京だが、黒川と何か企んでいるのを警戒していた。

「演劇部から人とウィッグを借りてきた」
「文化祭で自分のクラスに京と新海を引き込むために演劇部を利用したって言いがかりをつけられてな。仕方なく一緒に遊べるゲームを考えた」
「また俺に許可無しか!俺と千草に無断で色々企画すんな!」

黒川が勝手にした事に巻き込まれて、その尻拭いにまで巻き込まれる。
京は面倒だと思ったが、千草は文化祭の時と違って今回は特に関心がないようだ。
そう思って聞くと、やはり興味無さげに首を傾げた。

「んぇ?だって、何するの?害が及ばないならいいよ、何でも」

それを話がわかるととった誠は、早速準備をしだした。

「いや!千草の関心が薄いからって勝手に進めんな!本当に害が及ばないんだろうな!?」
「まぁまぁ。見てなさいよ」
「安心しろ。二人にとっても楽しいゲームを考えてやった」

何だかいまいち信用できないが、誠と黒川は自信を持っている。

後ろ向きにイスが五つ並べられ、そこにウィッグをかぶった演劇部員が背を向けて三人座る。

「はい、京もウィッグかぶって」
「ほらー!早速被害だ!」
「黒川も入るから。それにお前が入んないと意味無いんだよ」

京はぶつぶつ言いながら言われた通りウィッグをかぶって座った。
五人が揃ったところで、この企画意図が明かされる。

「本物の京を探せ!ゲーム!」
「はぁ!?」

声を上げたのは、探される方の京だった。

「今から五人をシャッフルするから、千草はこの中から本物の京を探せ」
「……え?俺が、何?」

千草は里久と話していて聞いてなかった。

「里久は京と体格が違い過ぎるから除外。黒川の他は演劇部からの参戦です!皆似たようなウィッグをかぶってるから、こっから本物の京を探せたら愛だね!」
「誠は何?」
「俺は審判よ、審判。不正を働かないようにさ」

確かに被害という被害は無いが、こんな事をして一体誰が楽しいのか。

後ろを向かされた間にシャッフルされた五人は、声でバレないように喋ってもいけないらしい。

「さっ、どうぞー!」

とりあえず近づいてはみるが、髪質や色、長さなどはウィッグでわからなくなってるし、座ってると身長も比べようがない。

「制服脱いでシャツになってもらっちゃダメ?」
「オッケー。じゃ、千草は後ろ向いてて」

薄着になれば少しは体格がわかるかと思ってだが、やはり細身の人は違いがわかりやすかった。

「右の人、違う」
「一番右?何で?」
「ちょっと細い」

誠が肩を叩くと、立ち上がって振り返る。

「はい、正解ー」

こうして見ると、京はどんな体格だったかわからなくなってくる。

「見えないように目を瞑ったら触ってもいい?」
「許可します」

千草は目を瞑ると、里久に誘導されて一人ずつ首や肩を触った。
それによって筋肉質な人が一人、首が細く骨張った人が一人脱落した。

「残り二人でーす!」

残りは、京と黒川だ。
首や肩だけではそんなに違いがわからなかったから、こうなったら……。

「もう一回触っていい?」
「どうぞー?」

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