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Lovely Prince

抱き締められ、背中をぽんぽんとゆっくりしたリズムで叩いて慰められて、少しずつ落ち着いてくる。

「ごめんな?誠もきっと、千草を誤解されて……侮辱されたみたいで悔しかったんだよ」
「うん……」

シャツの袖で涙を拭われ、長い指がさらりと髪を撫でていく。


京あっての今で、京あっての自分だから。
今を否定すると、京の存在まで否定することになってしまう。
だけどそれはあり得ないから、切っても切り離せない。

京は心の重大な、不可欠な部分を占めている。

「そうか……」
「ん?」

何故わからなかったのだろう。

「京はもうずっと、一緒だったのか……。京は俺の一部だから、離れたって居なくならないんだね?」

京は一瞬驚いた顔をしてから、にっこりと微笑んだ。

「そう。だから大丈夫。夢の中でだって助けに行ける。俺は千草の一部だから、ね?」
「うんっ」

もう、京が居なくなる夢は見ない気がした。

「だけど、俺がそばに居なくてももう寂しくないなんて言うなよ?俺の方が寂しいっ。千草にしつこくべたべたしてやるからな!」

京はそうおどけて言うと、またぎゅっと抱き締めた。

「うん。いいよ?」

優しさで包んで、愛情を注いでくれて、こうして笑顔をつくってくれる。
大好きだって、何回言っても足りないくらいに大好きだ。


あの後、何人もの中学生達で何度も話し合ったらしい。
例の三人は王子様な千草が盲目的に好きでこだわり過ぎるあまり、結局千草を傷付けてしまって、千草ファン失格だと言われてケンカになったとか。
それでも話し合ってやっと理解して、反省しているらしいとか。
だから許してくれるなら会って謝りたいと言っていると伝え聞いた。

「俺はもう、どっちでもいいけど……」

そう言うと、京は声をあげて笑った。

「本当千草は、人への感心が薄いんだな」

そうかもしれない。
けれど。

「でも、誠と里久はまだ怒ってるかな?ちゃんと会ってスッキリさせた方が、二人もこの事を忘れられるよね?」

俺のせいで……。
そう言おうとしたら、頬をむぎゅっと片手で挟まれてそれ以上言わせてはくれなかった。

「千草は人への感心は薄いけど、友達はとても大切にするね。それは二人もきっと嬉しいと思うよ」
「うー」

手を放してもらって、面白がる京をちょっと睨む。

「だから千草が責任を感じることはない。二人だって千草を思って怒ってくれたんだから。千草が二人のことを思って会うって言うなら、それは千草の優しさだよ。千草はちっとも悪いなんて思わなくていい」

こくりと頷いて、頼れるその胸に寄りかかる。

「……撫でて」

京の手をとって頭に導くと、ふっと小さく笑う気配がした。

「可愛い」

独り言ちる低音と共に、さらりと髪に指が触れた。

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あきゅろす。
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