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Lovely Prince

誤解を放置して勝手に問題が無くなってくれると思ったのが甘かったのか、例の三人は拗ねてぶつぶつと文句を言い始めた。
間近で千草を見ていて不満があったのかもしれないが、構って話を聞いてほしいと暗に訴えているようにも見えて、誠と京は互いに苦笑した。
しかしこれでは、せっかくの楽しい雰囲気も台無しだ。
そこで声をあげたのは、高校生組ではなかった。

「いい加減にしたら?」
「はぁ?」
「もうやめなよ。新海先輩のこと王子様って思いたいのはわかるけど、本当は違うんだよ?」
「何それ。偉そうに……」
「僕達も勝手に勘違いしてたからわかるよ、ね?」

中学生達から自分の名前が出て、千草は困惑して反射的に京を見た。
千草に“変わってしまった”と落胆した生徒が居ると気付いてはいたが、もう京と黒川のおかげで元気づけてもらったから、普通に接していたのに。
それが彼らを不快にさせてしまったのか。自分が無神経だったのかと申し訳なくなっていた。

中学生の話し合いがヒートアップして口論になったところで、誠が仲裁に入った。
京も了承したとはいえ、一緒にと言い出したのは誠だから、責任を感じていた。

京はそこから少し千草を離して距離をとった。


仲がよく幸せそうな二人を間近で見ても、千草が変わったと失望するのか。
その問いに、問題の生徒は自分の理屈で反論した。

「新海先輩は、その先輩が来る前もずっと京先輩とラブラブで幸せそうでした!」

彼らには、千草が京によって癒された事が理解出来ていないのだ。
自分達の理想通りでなくなってしまったのを里久のせいにして、その変化を悪とした。

「それは違う。千草は京のおかげで前より心に余裕ができたと思うし、ずっと仲良くもなった。それを王子様じゃなくなったって言って里久のせいにするのは間違ってる」
「でもその先輩が居なければ新海先輩は変わらずに、京先輩ともラブラブになれましたよね?」

やはり、彼らにはどうしても理解できないようだ。

「んぁーっ!もう、めんどくせぇー!」

誠は頭を抱えた。
何度説明してもわからないだろうと焦れったくなって、京と千草を呼んだ。

「ちょっと二人!こっちに来なさい!」

納得できない彼らに、根気強く説明しなおす。

「いいか?千草が変わったことに里久は関係無いの!千草は元々今の方に近かったんだろ?京」
「そっ。千草はよく笑う子だったからね。君達が知ってる王子様千草の方が俺にとってはびっくりしたぐらいだよ」

京の言葉を聞けば……と誠はホッと息をついた。
が。

「え……じゃあ、僕達騙されてたってこと?」
「ウソ。キャラつくってたってこと?」
「何か僕達振り回されて、バカみたい」

結局最後まで勘違いしていて、いまいちスッキリしない終わり方だ。
それでも彼らがこれで里久を責めるのをやめるなら……と、京と誠が顔を見合せて諦めようと決めた時だ。

「がっかり〜」
「そんな人だと思わなかったぁ」
「あのキャラに騙されてたね。皆にも教えてあげよ?」

京はその時、彼らが今度は千草本人へ、失望ではなく怒りをぶつけ始めるんじゃないかと思った。
咄嗟に目を合わせた誠も、同じ事を危惧したのがわかった。
すると誠はパチン!と顔の前で両手を合わせ、事前に京に謝った。

「悪い!ちょっと千草借りる!」

別にキャラをつくってると思われたって、それを言い触らされたって関係ないと思っている千草は、何をされるのかと京と誠を交互に見た。

「里久!京とちょっと離れてて。いいか!合図するまで京を放すなよ!?」
「えっ?いいけど……」

里久は心配そうに京を見上げた。

「あんまり無茶してくれるなよ」

京は深く溜息をつき、不安げな千草の背中をぽんと撫でて言う通りにした。


千草を中学生三人と向かい合わせてから、誠は気づかれないように里久に指示して京を隠れさせた。

「千草。京が居なくなったのを想像できるか?」
「嫌だっ」

千草は言われただけで眉間にシワをつくり、拒絶した。

「試しに想像してみるだけでも?ダメ?」
「嫌だ。無理っ」

そこで誠は質問を変えた。

「それじゃあ京が、里久が来る前の京に戻ったら?」

中学生は、興味深げにじっと千草がどう答えるか期待して見つめた。

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あきゅろす。
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