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01
父を探すため京に出てきた千鶴は、成り行き新選組に居候という名の捕虜という形で居座るようになった。
部屋からあまり出るなと言われているので、父を捜索することが出来ず少々退屈な毎日を送っていた。
そんな生活が数ヶ月続いた頃、部屋に戻ろうと廊下を歩いていると中庭の方から鈍い音がした。気になった千鶴は好奇心に負けて中庭をこっそりと覗いた。


「…! だ、大丈夫ですか?」


そこには千鶴と同じような年の一人の少女が倒れていて、急いで千鶴は少女の下に向かった。
少女の黒髪はぼさぼさで、服も所々にほつれが目立つ。


「小太刀…?」


その少女は胸元で何かを握りしめていた。ぼろぼろで良く分からなかったが、何と無く小太刀だと思った。


「どうした、千鶴」

「原田さん…」

「誰だ、そいつは」


原田は怪しむように倒れている少女を睨む。いいえ、分かりませんと言うと、原田は眉間に皺を寄せた。


「とりあえず…、土方さんを呼んでこい」

「分かりました!」


千鶴は急ぎ足で土方の下へと向かった。
そこに残った原田は少女を一瞥し、目覚めたときに抵抗されないよう少女の握りしめている小太刀を奪った。


「このままここで目立っても困るな…」


新選組は女人禁制であり、平隊士も目につくような庭だ。あらゆる誤解を受けたら困る、と原田は少女を姫抱きし一番近い部屋に向かった。


「(軽い…。ろくに食べてねぇな、こいつ)」


すらりと袖から伸びた腕は、原田が握り締めたら折れてしまうような華奢な体つきをしていた。


「(近いのは平助の部屋、か…)」


藤堂の騒ぎようが目に浮かぶ原田は少々苦い思いだったが、両手が塞がっている為足を使って乱雑に襖を開けた。
いきなり開いた襖にうお!と藤堂は声をあげて、原田をじっくりと見た。


「左之さん?…いくらなんでも、女の子を連れ込んじゃ駄目だろー」

「そんなんじゃねえ、静かにしろ」


おら、布団敷けと原田が命令形で言う。藤堂は納得がいかない様子でしぶしぶ布団を敷いて、原田はゆっくりと少女を布団の上に下ろした。


「でさ、この女の子どうしたんだよ」

「…中庭に落ちてた」

「嘘つくならもっとマシな嘘をつこうよ、左之さん…」

「俺だって分かんねぇよ。千鶴が倒れているとこを見つけた。詳しくは…、こいつが起きてからだな」


少女の青白い顔を見ながら藤堂に告げた。
床の軋む音がして、原田は鬼の副長に後を任せたのだった。




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