土方は自室で溜まっていた書類に目を通していると、廊下からバタバタと音が響くのが聞こえた。
「土方さん!」
勢い良く土方の部屋の戸が開く。そこには雪村千鶴がいた。
あまり人目のつく行動はするなと言って置きながら…と土方は頭を抱えた。
けれども千鶴の血相を変えた様子に「どうしたんだ」と問い掛けた。
「あの、原田さんが…」
「左之がどうかしたか」
襲われたのか怪我でもしたのか、あるいはそれ以上の何かがあったのかと土方は眉をひそめる。
一方の千鶴は混乱していて、何を言えばいいのか迷っていた。
「と、とにかく来て下さい!」
千鶴の口からはその言葉しか出てこず。来たときと同じように早歩きをする千鶴のその後を、土方は着いていった。
「で、」
「えーと…」
土方の目付きの悪い視線に耐えられずか、千鶴の目が泳いだ。
中庭には誰の姿もなく、内心慌てふためく千鶴。
「(何で原田さん達いないの?土方さんを呼んでこいって言ってたのに…!)」
「原田さんに土方さんを呼べって言われたんです!本当です!」
「…誰もいねーじゃねぇか」
嘘だと思われたくなくて千鶴は必死に弁解するが、土方が正論を述べると千鶴は黙り込んでしまう。
「左之は何で俺を呼べって言ったんだ?」
「あの…、女の人が倒れていて…それで」
「女ァ?」
また一息吐く土方は「新八か平助にでも聞いてみるか…」と独りごちた。目を輝かせて土方を見る千鶴は嬉しそうだった。
まず向かったのは、ここから一番近い藤堂の部屋だ。
ずんずんと土方は進んでいき、襖の前に立つ。
「おい平助、左之はいるか?」
「あ、土方さん?左之さんもいるよ、どーにかしてよこれ」
呆れたように答える藤堂に、土方が襖を開けると、千鶴が見つけた女の人が布団の上で眠っていた。やはり顔色は悪そうだった。
「どういうことだ、これはよ…」
土方は襖を閉める。土方の視線は彼女から外れぬまま、原田に問い掛けた。
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