確実なる破壊
「いやぁ、やりましたねぇ」
ムーファは血で汚れた体を濡れたタオルで拭きながら、隣で退屈そうに髪をいじっているアイルに話し掛けた。
「12番隊…すっかり忘れていたがあのパルスの隊だったか」
アイルはさらに髪を指に絡めつけていじくりながらふぅっと小さな溜め息を漏らす。
「あの色素が薄かった奴ですか?恐ろしい奴でしたね」
ムーファはパルスの顔を思い浮かべた。
「綺麗な顔して恐ろしい魔法使ってましたねぇ、何て言いましたっけ…あの魔法」
「生気吸収魔法"ドレイン"だ。奴は今仲間の生気をたらふく食らって満足だろう」
アイルは暗い自分の部屋の壁を見つめてまたふぅっと溜め息を漏らす。
「くそっ…アイツ一人に何人もやられちまいました……アイツ…世界が赤く染まる中…一人で真っ白で…不気味でしたね…」
悔しそうな顔をしてから、すぐ脅えた顔になる。百面相をしながらムーファは戦場の様子を思い出した。
辺りに血が飛び散る中、真っ白な服と肌、薄い水色の髪を濃い赤に染めることなく、明らかに一人浮いていた事を。その光景は血を浴びて真っ赤に染まっているより逆に不気味で背筋が寒くなったのを覚えいる。
「"白い悪魔"。それが奴の呼び名だ。ウィクレッタはそこいらの犬とはわけが違うのさ。ところでムーファ、敵へダメージはどれくらい与えられた?」
「は、はい。任務終了して帰る処を襲ったため、敵方へのダメージはかなり与えられたみたいです。ただ、こちらもその"白い悪魔"に何十人も殺られたので少なくとも50は失いました」
ムーファは戦場で観察した様子をアイルに話した。
ムーファはどんな状況でも観察を怠らない。冷静に物事を分析する力に秀でている。
アイルがムーファを側に置く理由がこれだった。
「そうか…お前は良くやってくれる。これからも頼むぞ」
「は…はい!!!」
アイルはムーファを見て優しく微笑む。ムーファは誉められた事が嬉しくて頬を赤らめながらにっこりと笑った。
「ムーファ、次の戦支度をしてくれ。万全な状態になったらまた奴らを葬りに行こう」
「はい!」
ムーファはさっと身を翻すと、スタスタと部屋の外に出ていった。
暗い部屋に一人残されたアイルはゆっくりと思考を巡らす。
国のふざけた政治を立て直すのは自分達だ。
俺たちがやらずしていったい誰がやると言うのか。
この国をもっとより良くしたい。もっと住みやすく、幸せな世界に。
その世界をつくる上での最大の障害、【FANTASMA】
この組織は絶対に破壊せねばならない。
「次は…どうするかな…」
アイルは殺気だった目で壁を睨み付けながら策略を練り続けた。

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あきゅろす。
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