般若オーラ
「やってみろ」
簡単に言うタピスにシルハは言葉を失った。
一体どうすれば小さな水の弾が木を幹から折るんだよ。不可能やっちゅうねん。
心の中でグチグチと文句垂れながらシルハはタピスと同じように手を前にかざす。その時シルハはあることに気付いた。
「タ…タピス隊長!!」
「なんだ?」
危機迫る顔で尋ね、タピスは少しびっくりした様に目を大きく開きながら聞き返した。
「…魔力を飛ばすのってどうすればいいんデスか!!」
ピシャーン!!
って漫画なら背景全部ベタ塗りされて稲妻が落下してるような状態になっているだろう。タピスの表情がかなり歪んだ。
「はぁ?おまっ…え?」
シルハの言葉にタピスはかなり動揺してる様子だ。言葉が最後まで発音出来てないぞ!
「飛ばし方…知らないです…」
「普通にやんだよ普通に!!螺旋を作った時みたいに飛ばすのをイメージすんだ!わかれよ馬鹿!!」
「ひゃっ…はい!!すいません!!」
タピスの半呆れ、半怒りの混じった顔にびびってシルハは体をびびくんっと震わせた。美形が怒るとかなり怖い…。
スゥ…ハァ…
まだ恐怖で強く脈打つ心臓を落ち着かせる為に、シルハは目を瞑って深呼吸をする。
心臓もやっと落ち着きを取り戻すと、そのままイメージをする。
球状にした魔力の形を変え、小さく分裂させてから一気に前に飛ばす。イメージを済ませるとシルハはゆっくり瞳を開いて、魔力を動かしていった。
小さく分裂した水を見て、シルハはイメージと共に強く念じた。
飛べ!!
小さく分裂した水の球は飛んだ!
しかし、前方に飛んだのはほんのわずか。殆んどが四方八方に飛び散り、地面、壁、天井に穴を開けていった。天井に張られたガラスが上から落ちてくるのをシルハは必死で避ける。
水の弾はタピスの方にも飛んだらしく、軽く驚いた声をあげて重心を瞬時に後ろにし、体を少し倒すことでギリギリ躱していた。
「シルハ…」
「す…すびばぜ…」
先程より怒りのオーラが増したのか、タピス後ろに見える般若を見てシルハは半ベソかきながら謝った。
「こんの方向音痴が」
半ベソのシルハに更に追い討ちをかけるタピス。後ろに背負った般若オーラもまがまがしくシルハを睨んでいる。
「オラ!まだまだやるぞ!!」
「ひぃぃぃぃ!!」
半ベソがいつしか本気泣きに変わりながら、シルハはその日タピスにしごかれまくったという。

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