驚異の始動
真っ暗な部屋。明かりも付けずに男はフカフカの椅子に深く腰をかけ考え事をしていた。
次は何処から崩すか…
男の目は殺気で暗闇でもギラギラと輝く。誰も寄せ付けないまがまがしいオーラに彼の側近であるオレンジ色の髪の男は恐々男に話し掛けた。
「アイルさん。次は何処を崩しますか?」
この男、アイル・モルソーはドリミングの最高幹部である。今はファンタズマの何処を潰していくかということを冷徹な瞳で考えていた。
「そうだな…」
アイルは肩より少し長めの真っ赤な髪を揺らしながら椅子から立ち上がる。
「マズは…一暴れして復活祭でもするか」
漆黒の瞳は微かに微笑む。だが放たれる殺気はみじんも薄れる様子がない。
「ムーファ、今ファンタズマが活動してるのは何処だ?」
「はっ!今は1番隊、3〜4番隊、6〜12番隊がそれぞれ1つ、計10の町で活動をしているようです。」
ムーファと呼ばれたオレンジ髪の青年は直ちに答える。
「…籤引きで決めるか」
どの隊から潰したとてさして関係など無い。終いには全て潰すのだから。
アイルは机の上に置かれたメモ用紙を適当に10枚に破くと、それぞれの隊の番号をボールペンで書き込んでいく。
「ムーファ、好きなのを引け」
「はい」
掌に折り畳んだ10枚の紙をのせ、アイルはムーファの前に突き付ける。ムーファはさして迷う様子もなく適当に1枚引くとそれをアイルに差し出した。
「どれどれ…?12番隊か…」
アイルはその籤の紙を開き番号を確認すると、ゴミ箱へ紙を小さく切り刻みながら捨てていく。
「ムーファ、12番隊は今何処に居る?」
「このアジトから南に10q。"アドナ"にて活動しています。」
ムーファは全ての情報が頭に入っているのか、迷うことなくアイルの必要としている答えを引き出していった。
「10qか。近場だな。どうやら俺は籤運がいいみたいだ」
低い笑い声を溢しながら部屋の隅に立掛けられていた刀を手にとる。
アイルの愛用の刀、キリトレイヴは驚異の長さを誇る刀で、全長は2mを悠に越す。自分の身の丈以上の刀を片手で楽々振り回し、背中にくくりつけるとアイルは部屋のドアを開けた。
「ムーファ…聖戦に行くぞ。我等の夢を叶える為に」
「はい!!」
アイルとムーファは暗い部屋から外に出ると、仲間の待つ講堂へと足を運ぶ。
そこは血に飢えた荒くれものや、己の正義を信じる者が集まる場所。
「行くぞ同胞よ。生温い国の体制を建て直すために立ち上がるのだ。国の犬の息の根を止めに行こう」
途端に講堂一杯に雄叫びが上がる。士気は上昇し、ドリミングの一員達は一気に外へ駆け出していった。
12番隊の任務地である"アドナ"へ向かって。

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あきゅろす。
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