死の臭い
 タピスは廊下に出ると、他の隊員達に的確に次の行動の指示を出す。

「お前らは最上階に行き、フロウィと共にウィルスの撤去をしろ。残りは被害者の生存者を探せ。研究員を見つけた場合は殺せ」

『はいっ』

 隊員達は返事をすると、自分の仕事をするために駆け出していく。タピスは一通りその様子を見守ってから、足に魔力を集中させた。

 一気に地を蹴ると、目にも止まらぬ早さで一気に廊下を走り、6階から地下までを、ものの数秒で駆け抜けた。
 これは緻密な魔力コントロールを必要とするタピスが編み出した念唱不要の魔法、"ステップ ダンス"である。緻密にコントロールされた魔力を体の部位に集中させ、爆発的な力を産み出す特殊魔法。現在これを完璧に操れるのはタピスしか存在しない。
 誰よりも早く地下に到着すると、死体が腐ったような酷い臭いに思わずタピスは鼻と口を手で覆った。

 タピスは廊下を見回すと、そのまま廊下を進み一番手前のドアを開けた。

「…っ!」

 開けた瞬間に更に酷い臭いがタピスの鼻をつき、顔を歪める。思わずドアを閉めようとすると、タピスの耳は音を捕えた。

「…たっ…」

 人…!?

 タピスはドアを閉めずに、逆に勢い良く開けて中を確認する。部屋の中には無数のベッドとそこに寝転ぶ腐敗した死体があった。

「…誰かいるか?」

 タピスは息の詰まりそうな最悪の空気を出来るだけ吸い込まない様に中に声を掛ける。すると、タピスの口から白い息が吐き出された。この地下は地上と違ってかなり寒いのだ。

「…だ…」

「!」

 微かな声を聞き取り、タピスは死体が溢れる部屋へズカズカと入り、生存者の確認をする。部屋の奥に進むほど、この世の物とは思えない臭いにタピスは吐気がしてきた。

 しかし、1つ1つのベッドを確認しながら、生存者を求めてゆっくりと奥へ進んでいく。一番奥にたどり着くと、ベッドに横たわる生存者の姿をついに見付けることが出来た。

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あきゅろす。
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