脅し




 ここはとある研究所。

 漆黒の美しい髪をなびかせた青年は研究所のとある部屋に居た。

お前らは、ここで最新のウィルス兵器を研究していたわけだな」

 青年は腕を組ながら自分の前に並ぶ縛られて動けなくなった研究員に質問をした。

「そうさ、ささ…最高のウィルスだヨ…ケケケ」

 焦点の合っていない瞳で気違いじみた笑い声を溢しながら一人の研究員が答える。

「じゃぁその実験の為に近場の町から人を誘拐したのも認めるな?」

「あぁしたさ。奴らには感謝して欲しいネ、素晴らしい研究の材料になれたんだ」

「そうか、もういぃ」

 腕組をやめた青年は、そのまま一気に研究員の頭を蹴り飛ばす。すると、まるでロケットランチャーに粉砕されたかのように研究員の頭は簡単に吹っ飛び、原型をなくした。

 血を吹き出しながら倒れこむ研究員を見て、他の者は脅えた声を出す。

「うざってぇ…」

 低い声で脅すように青年は呟いた。

「タピス、次々」

「あぁ…」

 青年に声を掛けたツインテールの可愛らしい少女、フロウィはタピスの肩を取り、次の動作へ促した。


 ここはあるウィルスを作っていた研究施設。

 実験材料として町の人を誘拐していたと言う事により、タピス率いる7番隊が任務に赴いていた。
 今は一旦戦闘は終わり、生き残りの研究員を全員縛り上げ、尋問の最中だった。

「で? そのウィルスはどんな効果がある?」

 先程頭を吹き飛ばした右足を床にトントンと叩き付けながらイライラした面持ちで残りの研究員の尋問を続ける。

「びょ…病気を引き起こす…」

 一人の研究員がその血に染まった足を脅えた目で見つめながら答えた。

「どんな?」

 脅すようにトントンと更に足を動かしながらタピスは尋ねる。

「…新種の病原体だ。まだ効果は研究中で…」

「あっそ」

 この言葉に興味をなくしたのか、タピスはさっさと次の話題に切り替えた。

「そのウィルスは今どこだ? こちらで破棄する」

「……」

 研究員達は下唇を噛んで答えようとしない。タピスはその様子を見て溜め息をついた。

「いいか? もう一度聞く」

 それと同時に、一番側にいた研究員の首を蹴りで吹っ飛ばした。
 その研究員の首は粉々に砕けちり、肉片が他の研究員の顔や体に付着する。

「ウィルスはどこにある」

 テメエらに断る権限は無いと言わんばかりのタピスの迫力に、半ベソをかきながら研究員は答えた。

「最上階にある冷凍庫の中だ…。暗証番号は【wi163】…」

「そうか…フロウィ、こことウィルスは任せた。被害者の中から生存者を探してくる」

 タピスはクルリと後ろを向くと、スタスタと出口へ向かっていく。

「タピス…感染しないように気を付けてね…」

「あぁ」

 後ろを振り向かずにタピスは廊下へ出ていった。

 それを確認すると、フロウィは研究員の方を向く。

「ごめんなさい。"火種"は残せないの」

 フロウィは悲しそうな目をしてから、一気に無表情に変わる。
 その後は、その部屋から大量の血の臭いがした。

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あきゅろす。
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