終わりの伝達
『――確認が取れました。やはり洞窟に居た人は今回の事件の被害者みたいですね』
「やっぱりそう……。本当にただの囮だったのね……」
その頃場所を戻してベールーガの街。町長と謁見をしていたギージットンとシェリンダの元に1本の通信が入っていた。ザヒヌの村へ派遣したアオからのものだ。
「今は送り込まれた魔力の反動で目覚めない上に、起きても魔力になれてない関係で暫くは体に違和感が残るかも知れないけれど、それは時と共に弱まって正常に戻るはずだとザヒヌの村長に伝えてちょうだい。どうしても不安なら、ファンタズマから医療スタッフを派遣するともね」
『かしこまりました』
アオは返事をすると、早々に通信を切る。シェリンダも通信が終わったのを受けて、ベールーガの町長へと目を向けた。
「お聞きの通り、今回の事件で誘拐された方々を発見致しました。人数も伺った数と一致していますので、全員無事と考えてよろしいかと」
ギージットンもタイミングを見て、一緒に通信を聞いていた町長へ声を掛ける。
「それは本当によかった……。しかし、隊長さんはどうしたのかね……? 先程は隊長さんが挨拶に来てくれたのだが…」
町長はホッとしたように長く息を吐き出してから、不安そうにギージットンへ視線を向ける。ギージットンは目を伏せ、言いにくそうに口を開いた。
「隊長は今任務で負った傷の治療中です。本来ならば隊長が伺うところ、私の独断で代わりにご挨拶へと伺いました。申し訳ございません」
言い終えると、深々と頭を下げる。意識不明の状態だとは、どうしても伝えられなかった。
「いや、それは構わない。隊長さんの怪我の状態は大丈夫なのかね…?」
町長は眉を下げながら、真剣な眼差しを向けてくる。
「はい、命に関わるものではありません」
本当は危険な状態だとは言えない。ウィクレッタと言う名前はとても大きい。個人の評価が組織としての観点へと繋がってしまうのだ。だから、本来の事を言うことは出来ない。ウィクレッタが重症などと知れば、ファンタズマの信頼を揺るがす結果としかならないからだ。
「それならば安心した。隊長さんにもお大事にとお伝え下さい」
「ありがとうございます。必ずや伝えさせていただきます」
この町長の優しさに、ギージットンとシェリンダは少々の驚きを抱きながら、また深々と頭を下げた。
話を終えてから、残りの町へと回っていく。一番時間が掛かったのは、町の前に大量の死体が転がったアルバナであった。ファンタズマの隊員達の死体に恐怖と驚きを隠せぬ町長へ、事件の終結と謝罪を伝える。動揺しながらも、行方不明者の発見と事件の終結を聞いたら少し落ち着いたのか、ファンタズマへの労いを貰った。しかし、その時の町長の目は少し冷めていた。
「最後はオマラージュだな……」
町を出ると、呟くようにギージットンが言う。
「えぇ……」
シェリンダも頷くが、その表情は少し暗かった。
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