異様なる風貌
 笑顔のリーフェアルトの姿を見て、ピゼットは多少の動揺を覚えた。

(セリアーデの歌が効かない…!?)

 セリアーデの歌は耳ではなく、直接脳へ届く音波だ。ジュイのように耳を塞いで防ぐことなど不可能。

 それなのに、彼女の周りからは魔力の波動は感じられない。つまり、ジュイを助けたときのように自分の身を魔法で守ったわけではないのだ。

 リーフェアルトの魔法のお陰で音の猛威からも逃れられたジュイも、驚いた表情をしながら両手を耳から離す。リーフェアルトはにっこり笑うと、ピゼットとセリアーデを交互に見つめた。

「ふふふふ。私にはそんな歌は効かないよ〜」

 その言葉の意味がわからず、ピゼットは彼女をまっすぐ見つめる。リーフェアルトは嬉しそうな笑うと、自分の存在をアピールするように両手を広げた。

「"ヴァンパイア マジック"の使い手の私にはこんなの意味ないよ〜。私の魔法は常に誰かの脳波が流れ込んできて、とても今の感じに似てるの。慣れてる私にはこんな音痴な歌、効かないよ〜」

 くすくすと、厭らしい笑みを携えて広げた手を耳元へ宛がう。

「へぇ…。なかなかやるじゃない」

 ジュイはくすりと笑うと、扇子をバッと広げた。

「マジか…」

 ピゼットは、想定外の事実にそれだけを呟くと、意味がないならばとセリアーデを消し去る。

「じゃあ、これはどう?」

 そのセリアーデの身体を形成していた魔力を使用し、別のイメージを作り出していった。

「《描かれた夢は生を受け自由を手にする》」

 呪文と共に、魔力は形を生み出し、魔法となっていく。その魔力は黒く渦巻き、巨大な布のように広がった。
 ひらりとその布が地に落ちて広がると、真ん中がからもこりと盛り上がる。その先端から真っ白な頭蓋骨が顔を覗かせると、その布の中から骨の手と巨大な鎌が姿を表した。

 その鎌の刃からジャラリと長く鎖が延び、カチカチと金属音を鳴らす。ふよふよと浮遊するその姿は、まるで死神のようだと印象付けるのに充分だった。

「あら、今までのとずいぶんタイプが違うわね」

 ジュイはその姿を見て、素直な感想をのべる。今までのと召喚獣とは、明らかに雰囲気が違う。
 どちらかと言えば可愛らしい召喚獣が多かった中、この召喚獣の見た目は異様にさえ映った。

「違うのは見た目だけじゃないかんね」

 ピゼットがニッと笑みを浮かべると、死神のような召喚獣はその骨の手で持つ巨大な鎌を、鎖の音を響かせながら構えた。

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あきゅろす。
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