紙束
 ふわりと、柔らかい風が頬を撫でる。外はもう月が上っていて、ピゼットはテントの中で、布団に寝そべりながら天井を見つめていた。

 さて、今回の任務は面倒だ。ターゲットに対する情報があまりにも少なすぎる。苦々しい表情をしつつも、どこか楽しそうな表情を浮かべていた。

「あの、ピゼット隊長…ハルです」

 その時、外からの声に顔を向けた。

「入って」

 起き上がりながら招くと、大量の紙を抱えたハルが、紙を落とさないように奮闘しながら頭を下げる。それからテコテコ歩いてくると、テントの中央に設置されたテーブルにどさりと紙束を乗せた。

 ピゼットもテーブルに近寄ると、一番上の紙に書かれた字を素早く目を通す。

「ありがと。お疲れ様」

「いえ…」

 にっこり笑いながら彼の目を見ると、照れたのか少し顔を赤らめながら視線を下へ運んだ。

「あの、こんな感じで…」

「待って。さすがにそんな早くに目を通せないよ」

 それからちょっと緊張気味に顔を上げるてきたが、苦笑いをしながら紙束を持ち上げる。

「す、すみません…」

 また上げた視線を落として、失敗したとがっくり肩を落とした。ピゼットは顔は紙へ向けたまま視線だけハルに向けると、小さく笑いを零す。

「急いで目ぇ通しちゃうから、そこ座ってて」

 椅子を引いて座ると、ハルの一番側にある椅子を指差す。ハルは頭を下げると、お礼のようなことを言いながら座り込んだ。残念ながら、もそもそ話した為に何を言ったかは詳しくは聞き取れなかったが。

 ピゼットは足を組むと、さっとメンバーに目を通す。ハルの仕事は信頼しているので、特に詳しくは調べない。まずチームのトップとなるアンケルを確認し、それから素早くどのチームをどの町に向かわせるかを考えた。

「よし、面子は任せたよ。とりあえず、どの班をどの町に割り振るか決めよう」

 ある程度目星を付けてから、緊張した面持ちでそわそわしたハルへ目を向ける。紙束をテーブルのど真ん中へ乗せると、「はい」と小さく頷いた。
 紙に手を延ばすと、何かを言いたそうに口をもごもごと動かす。ピゼットはあえて話をふらずに、自分から言い出すのをさりげなく待った。

「実は…その……ある程度考えて来たのですが…」

 しばらく沈黙してから、意を決したと言うようにピゼットを見る。

「ん。教えて」

 ピゼットはにっと笑うと、ハルが話し出すのを待った。

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