中と外
「にしても、そんなことでこの町の人達はあなたをイカレたなんて言うんですか?」

 ピゼットはまた膝にリーフェレットを抱え治すと、不思議そうな顔をしながら尋ねてきた。

「ぇ…」

 その言葉にファリバールはキョトンとしてしまう。シェリも驚いたように目を見開いていて、その反応にかえってピゼットが戸惑ってしまった。

「だって…それって凄い才能なわけで、個性なわけじゃん。それだけで…」

 不思議そうに言うと、ギージットンが遠慮がちに肩を突く。ふとそちらに顔を向けたので、耳元でこそこそと話し出した。

「ここは'内部'じゃありませんから。'外'では自分と違うものを遠ざける傾向にあります」

 囁かれた言葉に、ハッと息を飲む。あちゃっと小さく呟きながら苦そうな顔をした。

 ファンタズマ内部では、特殊な力を持つ人は逆に重宝がられる。それは強い個性であり、また、延ばすべき力とされるのだ。
 ファンタズマ内部には、不可思議な人や癖の強い者、そんな特徴を持った人がたくさんいる。だからファリバールの能力もそういうものと同じに見えて、何故意味嫌うのかと驚いてしまったのだ。
 だが良く考えれば、外と中は違うのだ。

「すみません…」

 自分もファンタズマ生活が長いから、すっかり頭が染まりきっていた。そうだ。外は違うものを嫌う。忘れたはずではなかったのに、傷は意外にも癒されていたらしい。

「いえ…そんな風に言ってもらえるなんて考えてもみなかった…。そう、か…」

 呟くように言うと、物思いに耽っているのか、瞳は何処か遠くを見ている。シェリはそっとファリバールの手に自分の手を重ねた。

「さて、長くお邪魔してしまったね」

 空気を入れ換えようと、リーフェレットを消し去ると、すくりと立ち上がる。

「え? もっとゆっくりして良いのよ?」

 驚いたようにシェリは顔を上げたが、ピゼットはゆっくり首を振った。

「んん。町の外で部下が待ってるし。吸血鬼の正体もわかったから、戻って作戦を立てなきゃ」

 続いてギージットンも立ち上がり、2人でぺこりと頭を下げる。

「お話ありがとうございました。それに、お茶美味しかったです」

 にこりと目を細めて微笑んでから、扉に向かって歩きだした。

「あ、あの…!」

 慌てたようにファリバールは立ち上がる。声に反応して振り返ると、声をかけた本人が当惑したような顔をしていた。

「…お仕事頑張ってください」

 なんとかそれだけ言う。ピゼットとギージットンは笑みを広げて頷いた。


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あきゅろす。
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