内面と外面
「初めまして。ファンタズマから参りました。ウィクレッタが一人、9番隊隊長、ピゼット・オルズレンです」
名乗った町長に自己紹介をすると、軽く頭を下げる。
「あなたが…」
グルジアンは目をしばたかせ、ピゼットとギージットンを交互に見比べた。
ギージットンは巨漢だ。150も半ばほどしか身長のないピゼットと並ぶとさらに大きく見える。腕も太くて体は筋肉質。見るからに強そうなオーラがひしひしと伝わってくる。
片やピゼットは小柄でひょろっこい。二十歳を越えているが、童顔というのも手伝って見た目はどうみてもまだ子供。ひょろりと立つアホ毛も気が抜けて見えるし、国の抱える傭兵団のトップには見えない。早い話、弱そうなのだ。
騙されているのではないかと、グルジアンの顔が陰る。またかと思いながら、ピゼットはにこりと微笑んだ。
「ご安心ください。俺は本物です。ご不安でしたら公式ホームページをご覧ください。俺の顔が載ってます」
少し毒を込めて言うと、考えを読まれたのかと顔に焦りが滲む。
「いえそんな、疑ってなどおりませんよピゼット隊長。遠方からわざわざお越しくださりありがとうございます」
取り繕うように笑うと、背後について来た執事に視線を送った。ペコリと一礼して出て行った老人は、恐らくネットで検索に行くのだろう。毎度のことだと、バレないように小さくため息をつきながら、目が合うとにこりと微笑んだ。
「紹介が遅くなりました。彼は副部隊長のギージットン・クルーバー」
紹介をすると、彼は頭を下げる。こっちのが下なのかと言う驚きを目に色濃く写しながらグルジアンも頭を下げた。
嘘が下手だと内心毒づく。見た目だけで実力が決まってたまるかと思いながらも、彼は完璧なポーカーフェイスで微笑んでいた。
「さぁお座りください」
グルジアンはピゼットの笑顔で少し安心したのか、はたまたうまくごまかせたとでも思ったらしい。大分焦りをときながら、手でソファーに腰掛けるように促した。
「失礼します」
ペコリと頭を下げ、ピゼットは腰を掛ける。ギージットンはソファーの裏側に立ったままだ。再度促されたが、丁重に断った。
ギージットンの気遣いだ。自分よりピゼットの方が立場が上だということをしっかりと知らしめるために。気の利くいい男だと、ピゼットは心の中で称賛を送った。
「それでは、詳しくお話いただけますか? 今回の事件について、依頼者であるあなたから」
空気を切り替える為に、貼付けたような笑みを取っ払う。真剣な面持ちで尋ねると、メイドが持ってきたお茶に手を付けながらグルジアンはコクんと頷いた。
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