いざ出撃
なぜか露天風呂とと言う単語ににやにやする男3人を見つめながらシルハは困惑していた。いったいこの人達は何がしたいのだろうか。
「標的は時間帯によって変化する!セルマ隊員!今何時かね?」
ピゼットは妙な口調でセルマをクルリと見つめる。セルマは急いで浴槽から出て、木造の床を滑るように進み、脱衣所に続くドアを開けると顔だけ出して外を確認した。
その一連の動きを見て、そう言えば脱衣所の壁に時計が掛かっていたようないなかったようなとなんとなくシルハは思い出す。それというのも、さっさと服を脱がされて湯船に放り込まれたためにあまり周りを観察してなかったから記憶が曖昧だったのだ。
「ピゼット軍曹!!現在5時25分であります!」
セルマは時間を確認するとドアをピシャリと閉めて前方を向くと、敬礼をしてピゼットに時間を伝える。
「うむ。5時半なら充分可能性はあるな」
ピゼットは風呂の縁に仁王立ちをして腕を組みながら大きく頷いた。
「ではいざ行かん!決戦の露天風呂へ!!」
ピゼットは腰に手を当ててビシッと露天風呂への木造のドアを指さす。「おー!!」と手を挙げてドアの前にいるセルマとまだ下半身は湯に沈めたままのナナハが片手を上げて勇んだ。
露天風呂に行くくらいでオーバーではないだろうか。それとも時間帯によって水質でも変わるのかなと、妙に意気込んでいる3人を見てシルハは眉を潜めた。
ファンタズマの風呂は全体的に隊員達の疲労がとれるようにリラックスできる環境を提供している。どんな水質に変わるとしても、リラックス効果は約束されているのではないだろうか。
気持ちよく入れるなら良いと思うんだけどな…
シルハは3人の言動が理解できずに1人で湯に沈みながら悶々と考えていた。
どうでも良いけど…タオル巻いてくれないかな…
そしてシルハはドアの前と風呂の縁で仁王立ちをしているセルマとピゼットから目を背けながら心の中で祈った。
「よし!セルマ隊員、ナナハ隊員、シルハ隊員!心の準備はよいか!?」
未だに変な口調を止めないピゼットに、セルマとナナハはぐっと親指を立てて合意の合図をする。シルハだけ訳がわからず、取りあえずシカトしてそのまま湯に身体を沈めていた。
「ピゼット軍曹!新人のシルハ隊員が乗り悪いですわ」
ナナハがビシッとシルハを指さしてピゼットに告げ口する。
「ノ、ノリとかの問題じゃなくて、目的が見えないんですけど…!」
シルハは怪訝そうな表情をしたピゼットに何か言われる前にと口を動かす。その言葉にさらにみんなの顔が曇った。
「え…?見えないの?」
「わかんねーのか?これからやる事がよ」
「驚きやわ〜…ちゃんとついとる…?」
「つ、ついてますよ!!いったい何なんですか!?」
3人の驚愕の表情に逆にこっちがビックリする。そもそも目的が見えないだけで男である事を否定されるなんて嫌な話だ。
「大変だよん!!早く理解させてあげなきゃねん!男として!」
「「合点承知!!!」」
ピゼットが憐れな人を見る目でシルハを見てから2人にシルハを指さして何かを合図する。セルマとナナハは両腕をわき出引いて「オス!」と言うように気合いを入れると片腕ずつシルハの腕を掴んで無理矢理風呂から上がらせる。
はぁ…せっかく気持ち良かったのに…
シルハは観念したように自分で歩き出すと、全員で露天風呂へ出撃した。


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