今日は
日が少しだけ傾いてきた頃、シルハは少し遅れたナナハと一緒に少し遅れた昼食を食堂で取っていた。
「シルりん…自分よう食うな〜…」
シルハの前に並ぶのはお好み焼き、焼きそば、ビーフカレーに味噌ラーメン。デザートには杏仁豆腐にモンブラン、葛切りなどがずらりと並んでいた。もふもふ口を膨らましながら食べるシルハに、ナナハはあきれ顔で言葉を掛けた。
「ふぐ?…んっ…食べるのって好きなんですよ。美味しいし…食べても食べてもあんまふとんないんで小さい頃から一杯食べてたらいつの間にか胃が拡大しちゃったんですよね」
シルハは口に入っていた物を呑み込むと目の前に並ぶ飯を眺めながら昔を懐かしむような口調で話す。「ふ〜ん」と言いながらナナハは自分用の昼食であるドリアの皿を自分から遠ざけた。
「あれ?食べないんですか?」
ドリアの中はまだ半分以上残っている。シルハは訝しげな表情でナナハに尋ねた。
「ん。なんかおまえ食うとるのとか見とったら食う気失せてきたわ…。見とるだけで腹膨れるよって」
ナナハは腹が苦しくなってきたのか溜息をついて腹をさする。シルハはちょっと困ったような顔をしてから1つ提案をした。
「それ…もったいないから食べても良いですか?」
「まだ食うんかい」
シルハの口から飛び出した言葉にナナハはさらにあきれ顔になってツッコミを入れる。まぁ確かに残すのはもったいないとシルハの側にドリアを押しやると、嬉しそうにシルハは微笑んだ。
「ありがとうございます!!」
にっこり笑顔でお礼を言うと、伸びないうちにと味噌ラーメンを食べ出した。ずずずと言う麺を啜る音を聞きながらナナハはじっとシルハを観察する。シルハはそんなことも気づかずに黙々と昼食を平らげていった。
シルハは決して早食いじゃない。食べるスピードは人よりも少し速い位で、量があれば量があるほど食べ終わるのに時間もかかる。このメニューを全て平らげた時には既に時計の長い針は2回も円盤を廻っていた。
「食うのにどんだけ時間かけとんのや…」
待ち疲れたナナハは机に伏してグッタリしながらシルハに文句を言う。シルハは小さく謝ってからトレーを返しに席を立った。
時計に目をやれば三時半になったばかりだ。シルハはトレーを返却するといそいそとナナハの元に戻った。
「あのナナハさん…今日は予定なんかありますか…?」
「あらへんけど、なして?」
突然の質問に、ナナハは机に伏していた顔を上げてシルハの顔を見る。シルハはその返答を聞いて嬉しそうに笑みを広げた。
「もしよかったら修行に付き合って頂けないでしょうか?」
「ほ!?」
シルハの言葉にナナハは細い目を見開いて驚いた表情をした。だが思わず出てしまった声が裏返り、恥ずかしかったのか、少し頬を赤らめながら決まり悪そうな顔をした。
「ごほんっ…今日は休め言うたやろ?あんま体酷使しすぎるのも毒やで?2番隊は今度長期任務入ったみたいやからどない頑張ったって3日は帰ってこんし、今日くらい休めや」
ナナハは世話の焼ける子供を見るような表情でシルハを見つめる。シルハは困ったように眉を下げた。魔力コントロールは実戦で磨くのが一番と言われたのだから、相手が居なければあまり意味がない。
「ま、明日付き合ったるさかい。今日は無しにして、わいとすこし話さへん?」
ナナハはシルハの気持ちを読み取ったのか、優しい口調でシルハに話しかける。シルハはすこし考えた後に頷いた。
「んじゃ、外でも行こか」
ナナハはシルハの承諾を得ると細い目をさらに細めて優しい笑みを作る。それからテーブルに手をつきながら立ち上がり、シルハに来るように目で合図をしてから食堂を出て行った。

[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!