特別扱い
ピンクや黄色を基調とした女の子らしい可愛らしい部屋。棚にはアクセサリーがポイントとして飾られ、側には縫いぐるみが5体ほど並べられて置かれている。
他にもアンティーク的なオルゴールや小物がセンス良く配置され、犬や猫の置物の間に飾られた写真が納められた写真立てのあるこの部屋の持ち主、ヴィクナの話を聞き終えたナナハはふい〜っと長いため息をついた。
「そらずいぶんえらいことが起こったな〜」
「うん…」
ナナハはヴィクナの話を頭で整理し終えるとガシガシと頭をかく。その度に髪についた丸い飾りがこすれ合ってチャリチャリと音を立てるのを聞きながら、ヴィクナは少し表情を暗くして小さく頷いた。
「話のスケールの割にはめっちゃ甘い処置な気がせえへでもないけど」
ナナハは一重まぶたをさらに細くさせながらヴィクナに問いかける。
「ん?それはアタシの配慮さね」
そんなナナハの訝しげな表情を物ともせずヴィクナは微笑む。
「…あんま特別扱いはあかんよ?」
「してないよ。別に」
ナナハは少し心配そうにヴィクナを見つめる。ヴィクナは相変わらず笑顔でその忠告に答えた。
「してないんだ。アイツとシルハは違うもん。だからしてないよ」
ナナハはそのヴィクナの言葉にまだ納得していないらしく口をへの字にしながらヴィクナを眺める。ヴィクナはうっとおしそうにため息をつくと、ナナハの肩を掴んでくるりと向きを変えさせた。
「まぁそんなわけで謹慎だからさ、アタシらの任務の間シルハの世話頼むわ」
強制的に話題を終了させるように、後ろを向かせたナナハをドアの外にグイグイと押しながらヴィクナはにっと笑顔でナナハに語りかける。ナナハははぁっとため息をついた。
「ガキのおもりは勘弁やで?一応久々の休暇なんやから」
「一応アイツも16で分別はあるさ。頼んだよ」
ナナハの体がドアに近ずくと、ナナハはこれ以上言っても無駄だと悟ったのか、自分からドアに手を掛けた。
「了〜解。まぁ安心して任務出てくれや」
ナナハは笑顔で手を振るとドアを静かに閉める。ヴィクナは完全に閉まるまで笑顔で手を振って見送っていたが、扉が閉まると柔らかく手を結んだ。
「特別扱いなんて…してないよ?」
誰に問いかけるわけでもなく、口の中だけで言葉を作るように開閉の少ない口で小さく呟く。柔く握っていた手にギュッと力がこもった。
「アイツは死んだけど…シルハは生きてるもん…シルハは…」
ヴィクナは思わず床を見つめるように頭を垂れる。目の奥がジンッと熱くなってきたのを感じて、急いで顔を天井に向けた。
ドア越しに、まさかそのつぶやきが聞かれているとは露程も知らず。ヴィクナは流れ落ちそうになる涙を零さないように、天井を睨みながら呟いていた。
「やっぱ特別何やんか」
ドアに背を預け、目を長年ふさいでいたせいか生まれつきか、耳の良いナナハはドア越しに聞こえたヴィクナの声に、キリッと痛い物を胸に抱きながら呟いた。

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あきゅろす。
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