驚愕の言葉
彼が出てくるのはいつも突然だった。
初めて出会ったのは初任務前夜に見た夢の中だった。
その次は初任務の時に、敵のデルゼの魔法で閉じこめられた精神世界で
その次はナナハに気絶させられた時の夢の中。
そして最後は、ラクシミリアとの戦いで魔力が解放された時。
ほとんどが自分を導いてくれる助言などをしてくれた。
だがそれは全て彼からの一方的な接触だったのだ。
だが今日初めて
自分から彼を求めてみた
「ジルク…答えて…!!」
シルハは真っ暗闇の中で叫んだ。だが、灰色の髪をした少年の姿を見つけることが出来ない。シルハは真っ暗な意識の世界で、必死に彼の名を呼んだ。
「ジルク!!会って…話をしよう…!!!?聞きたいこと…いっぱいあるんだ!!」
そうだ。聞きたいことが山ほどある。
いつも含みのある言葉を放つ彼の言動が理解しきれない。
彼に会い、彼と会話するごとに、解けるはずの糸は堅く絡み付いて、いつも答えを遠ざける。
今日こそは糸をほどきたい。その一心で腹から声を出して声高らかに叫ぶ。だがその行動によって震えた空気は、ただ順に音を伝えながら遠ざかって闇に吸い込まれていくだけ。その振動は闇からシルハに帰ってくることはなかった。
「答えて…教えて…」
キミは誰で
自分とどんな関係があって
1つの体に2つの魔力、その意味が知りたくて
必死に暗闇の世界で叫んだ。
だが彼は姿を現さない。
まるで自分を拒絶するように
闇の中にたった1人でたたずまされていた。
「ジルク…?」
彼の声が聞こえない。
安心できる、彼の声が聞こえない。
彼の姿が見あたらない。
それだけで不安で。
わからないことだらけで
「教えて…」
混乱で心が壊れそうだった。
「俺とキミは…」
〔一緒なんだ〕
その時、背後から声が響く。シルハは驚いて後ろを振り返った。
そこにいたのは切望した灰色の少年。
シルハより少し長い、肩を越える灰色の髪をした自分によく似た少年が、優しい笑みを零しながら立っていた。
「一緒…?」
やっと見つけた少年。
そして貰えた答え。
だけどその意味が自分にはさっぱり理解できなくて、シルハは不安げに眉を下げた。
〔一緒なんだよシルハ…俺とキミは…一緒なんだ〕
ジルクはゆっくりシルハに近づく。そして、魔法バングルが外れた右手をそっと握った。
〔俺はキミで、キミは俺。俺たちは元は1つでなくちゃならない存在だったんだ〕
ジルクは歌うようになめらかに紡ぐ。
紡がれた、驚愕の言葉の意味がいまいち理解できなくて、シルハは口を開閉させたまま言葉に詰まった。
シルハはジルクでジルクはシルハで
元は1つでなくちゃならない者
〔俺たちは同じ人間なんだよシルハ〕
ジルクは切なそうに微笑む。瞳に動揺したシルハの姿を映し、その奥で悲しみの色を募らせながら。

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あきゅろす。
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