肉体的制裁
「なんやねんヴィクナん!!」
急に腕を引かれてつれてこられた先はヴィクナの部屋。やっと自由になった腕をさすりながら状況が飲み込めずにナナハは眉を寄せヴィクナに尋ねる。ヴィクナは少し荒くなった息を整えるように深く呼吸をした。
「ナナハ。話がある」
「それはもう聞いたわ」
ナナハは繰り返されたヴィクナの台詞にはぁっとため息を漏らした。その台詞は無理矢理腕を引っ張られた時に既に聞いている。
「うん、そうだね。じゃ、言うよ」
ヴィクナは額に中指と人差し指を押さえつけながら眉間にしわを寄せ目を瞑る。ナナハはいったい何の用事だろうと腕組みをしながらそのヴィクナの様子を伺った。
「実はね、シルハを謹慎処分にしたんだ」
ヴィクナは目を開き、額に当てた指を離して腰に手をあてがうと、ナナハの目を見ながら言葉を口にする。ナナハは意外な言葉に目を一瞬丸くした。
「そらけったいなこったなぁ。いったい任務地(そっち)で何が起こったん?」
ナナハは頭を乱暴にかきむしりながら普段より厳しい表情をしている少女に問いかける。ヴィクナは一回小さく頷くと、挑むようにナナハを見据えた。
「うん…話すと長くなるぞ?いいのか?」
「言いも悪いも聞かんとわからんやろ」
ごもっともなナナハの意見に、そうかそうかと呟きながら、ヴィクナは普段の表情に戻っていく。その様子に果たしてこの話題は大したことなのかそうでないのかの判断がいまいちわからず、ナナハは苦笑を零した。
ヴィクナはそれから話をまとめようと葛藤でもしているのか、また渋い顔を作るとそれきり黙り込んでしまう。なかなか話し出さないヴィクナに痺れを切らしたのか、ナナハは自分から話を切り出してみることにした。
「それで?なんで謹慎なんかにしたん?」
いきなりそんな結末だけ言われたってさっぱり話が飲み込めない。言われたからには最後まで聞いてやろうとナナハは少し身を前屈みにし、ヴィクナの目線に近づくようにして尋ねた。
「う〜んどこから話せば……うん。まずな、任務地にラクシミリアが居たん…」
「はぁっ!!?ラクシミリアやて!!!??」
ヴィクナの平然と発せられた言葉に、ナナハは我が耳を疑って思わず聞き返してしまう。途中で言葉を遮られたヴィクナはナナハのその反応に不服そうに頬を膨らませて天に手を掲げると、そのまま振り下ろしてナナハの頭にチョップを食らわせた。
「痛い!何すんねんヴィクナん!!」
「うるせぇ!人の話は最後まで聞け!!!!」
綺麗に決まったチョップはナナハの瞳を思わず潤ませる。痛みをかばうようにナナハは頭を両手で押さえ込んだ。
ヴィクナはそんなナナハに怒鳴りつけながら、チョップした手を再度細い腰に当て仁王立ちをする。そんな彼女の態度に、年下の女の子だが彼女の方が上司な事を、ナナハはなぜか今更ながら実感した。
「軸が逸れたな。話を戻すよ」
「わかりましたヴィクナ隊長」
「気持ち悪い!!」
「痛い!!」
実感したのか、急に敬語になったナナハに鳥肌が立つ。ヴィクナはガードが無くなった頭に再度チョップをたたき込むと、ナナハはさらに痛そうに顔を歪めながら悲鳴を上げた。

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あきゅろす。
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