何事もポジティブに
「はぁ…」
空は何処までも見えそうなほど澄み渡り、美しい日であるにも関わらず、彼の口からはため息ばかりが漏れていた。
「シルハ君、元気出して」
談話室のソファーに腰を掛けながら俯き続ける銀髪の少年シルハに、机を挟んだ向かい合わせのソファーに座るレイチェルは励ますために明るい声を出しながらシルハの顔を覗き込んだ。
その言葉にシルハは顔を上げるが、いつもとは違う微妙な笑顔を浮かべるだけで、レイチェルは心配そうに眉を下げた。
「謹慎ですんだならよかったじゃないか」
レイチェルの隣に座るルイは、いつまでも沈んでいるシルハにため息混じりで声をかける。隣でうんうん!とレイチェルが力強く頷いた。
「わかってるよ。わかってる。隊長の心の広さには感服ものだよ…だけど…」
自分だけ次の任務に置いてけぼり。
自分の侵した行動に対して余りにも軽い処罰と言うことは理解しているし、そのような処置で済ませてくれたヴィクナに感謝もしているが、やはり処罰を受けるとなると心にずんとくるものがあった。
「シル兄が行かないなら僕も行きたくないな…」
シルハの隣に座るマーダは寂しそうに瞳を揺らしながらシルハにしがみつく。シルハは曖昧な笑みを浮かべながらマーダの髪をくしゃりと撫でた。
「次の任務…軽いのだといいね」
そんな2人の様子を見ながら、レイチェルは薄紫色の髪を揺らして心配そうに上目使いで天井を見つめる。もし重い任務になると何日も帰って来れない。シルハが一人でいる時間がそれだけ長くなるのだ。
シルハは、それを聞いてせっかく上げた顔を再度伏せる。色んな考えが頭をよぎって、シルハは伏せた顔をまた上げた。
「…よしっ!クヨクヨしてられない!」
シルハは覚悟を決めたのか、目をつぶってパンッと頬を叩くと、ソファーから勢いよく立ち上がる。急なシルハの行動に3人は驚いて目を見開いた。
「俺、訓練所に行ってくるね!」
置いてけぼり。
それは寂しいことだけど、考えてみれば修業する時間が多く取れるということだ。
今は魔法バングルが壊れてしまい、魔力のコントロールが出来るか不安だし、すぐに任務に出ずに、調整の時間を貰えたのはかえってラッキーだったかもしれない。
ネガティブ思考はいけないよね…。
物は考えようだ。そう頭で割り切ったシルハは、驚いている3人に順に笑顔を向けながら手を振って談話室を出ていく。
呆気に取られた3人はそんなシルハを黙って見守っていた。

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あきゅろす。
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