衝突前に
二人の少女は睨み合いながら口元に笑みを作っていた。一人の少女からは巨大な魔力が放たれ、もう一人の少女からは黒と形容するに相応しかろう重苦しい空気が放たれる。蚊帳の外にされつつある男がドスンと手に持つハンマーアスクと呼ばれる片面は斧、片面はハンマーと言うかわった巨大な武器の斧の方面の刃を地に突き刺した。
「俺を忘れんなっての!」
「あ、そっか、居たんだよねザルディ。紹介どうぞ」
ザルディの主張に、今思い出したというようにヴィクナは紹介を促す。
「俺様を忘れるとはずいぶんなオツムだなコラ」
「髭面親父なんて若いアタシの脳内から削除されやすいだけさ」
ザルディが怒りマークを額に浮かべながら言う言葉に対してさして気にする様子もなくヴィクナは切り返した。
ザルディは渋い顔をしながらヴィクナを睨む。
「自己紹介しないならさっさと始めるよ?」
そんなザルディにヴィクナは苛々しながら言葉を投げ掛け、ザルディは更に渋い顔をした。
「ファンタズマ・ウィクレッタか一人、1番隊部隊長ザルディ・ケルタモスだ」
「1番隊部隊長殿と2番隊部隊長殿か。もう1隊居たと思ったが…」
ラクシミリアはザルディとヴィクナの顔を交互に見ながら数が足りないことを指摘する。ヴィクナとザルディはその言葉を聞いて訝し気に顔を歪めた。
「あり?なんでそう思うのかな?」
ヴィクナは抱いた疑問をそれとなく尋ねた。
敵には一体ファンタズマが何隊編成でこの任務に臨んでいるかなど知らないはずだ。それを何故ラクシミリアが知っているのか、ヴィクナもザルディも疑問に思ったのだ。
「わかるさ…。そうか…後は7番隊か。ここには来ないのだな…残念だ」
ラクシミリアから紡がれた言葉にヴィクナとザルディは目を丸くする。ラクシミリアはその顔を見て面白そうに笑った。
「3人の方が私を殺しやすかろう…。しかしウィクレッタが二人も来てくれたのだ、喜ぶべきであろう」
ラクシミリアはその事実に納得するように頷いてからザルディとヴィクナを睨み付けた。
「言わなくても知っているだろうが一応紹介しておこう。私は"呪術師"ラクシミリア…。殺し合おうか…ウィクレッタ共」
ラクシミリアは自己紹介をすると更に周りの大気を重くさせた。
「いいねぇ…面白そうな相手じゃねぇか」
「自殺志願者だね。お望み通り殺したるさ」
ヴィクナとザルディも各々乗り気な発言をすると魔力を練り込み始める。ラクシミリアの産んだ大気の黒さと、ザルディとヴィクナが放つ巨大な魔力がぶつかり合って辺りの木々がまた悲鳴をあげた。
「いくぜ!!」
ザルディは気合いを入れるように叫ぶと、誰よりも先に攻撃を仕掛けた。

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あきゅろす。
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