手紙の内容
封を切ると、書類が何枚か入っていた。
ワナワナと震える手で取り出そうとするがなかなかうまくいかない。チラリとテルを見ると、もう中身を取り出して、目を通し始めていた。
やばいと思い、勢いよく書類を封筒から取り出すと、三つ折りにされた白い紙に目を通す。黒字で印刷されたその字を早速シルハは読み出した。
本日はお日がらもよく…こんなことどうでもいい!
適当に上から下まで目を通したが、合否はこれには載っていないようだ。持っていた紙を放り投げ、違う手紙に目を通す。
その瞬間、一瞬心臓が止まった。
何度も見返すが間違いではない…
そこには2文字でしっかりと『合格』と印刷されていたのだ。
飛んで喜びたい衝動をなんとか抑え、フルフルと震えながらテルを見てみる。視界に入ったのは、魂が抜けたような顔で手紙を見つめているテルの顔。
「テル…どうだった?」
思わずにやけそうになるのをなんとか堪えた為に、上擦った声で聞く。
「信じられない…受かってる……嘘…だって、俺、試験ですごく失敗して…」
まだ魂が抜けたような顔で、注意しなきゃ聞き取れないような小さな声でテルは言葉を紡いだ。この顔はテルが驚いたときの妙な癖。
「やりぃ! テル! 俺も合格だ! やったな!!」
シルハは勢いよくテルに抱きついたが、テルはまだ呆然としている。目をパチクリさせながら、震える唇を動かした。
「俺たち…受かったの…?」
情けなく上擦った声。シルハは一回テルから体を離すと、笑顔で大きく頷いて見せた。
「そぅだよ! 受かったの!! 2人して!!」
このシルハの言葉でやっと事実を飲み込んだらしく、頬がどんどん紅潮していく。
「まじで…? や…やたぁぁぁぁぁあ!!!」
今度こそ2人は抱き合って喜びをしばらく分かち合った。
興奮が収まると封筒に入っていた書類に一通り目を通す。書いてあった事は以下のことだ。
入隊式は1週間後、午前10時より、FANTASMA本部にて行う。
隊員は全て隊室が設けられ、泊まり込みとなる。
持ってくる荷物に制限はない。
そして最後に、自分が所属する隊番号が書かれていた。
ファンタズマは全12隊に別れて任務を遂行することになっている。この隊は一度入隊したら特別な事情がない限りこの隊でずっと生活する事になり、どの隊に所属するかと言うのはなかなか大事なことなのだ。
「シルハ、お前…何番隊?」
緊張した面持ちでテルが訪ねてくる。シルハは自分の対番号に目を通すと、テルの方へ顔を向けながら口を開いた。
「2番隊…テルは?」
「残念…俺7番隊だよ…一緒じゃないんだ…」
隊で行動するから、隊が離れてしまうと会えるかどうかまで分からなくなってしまう。なにしろ世界中に派遣されるのだ。明らかに落胆の表情を浮かべながら、テルは下唇を噛んだ。
「そっか…寂しいな…」
溜め息をつきながら、残念そうな声色でシルハは言う。テルも頷きながら続きを読むべく手紙へ目をやった。
「だなぁ…あ! 見ろよシルハ! ケイル・ノルーザって載ってるぜ!!」
「え!?」
驚いた声を上げるや否や、シルハは急いで書類に目を走らせる。
……あった!
ファンタズマ総部隊長ケイル・ノルーザ。
この名前を見た瞬間に胸が高鳴った。
この人、ケイルこそがシルハがファンタズマに入ろうと決意したきっかけを作った人なのだ。
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