Sランク魔法
フロウィとラグスが目を向けた先には、黒い短髪、黒い瞳、黒い服を着た全身真っ黒な青年が立っている。リヴァイアサンの攻撃で大分敵の数が減った事を確認すると、少年は手を挙げ、それを合図にリヴァイアサンは湖中に戻っていった。
その途端、少年の影から風の様に人物が飛び出してくる。可憐な体術で敵を倒していくと、その人物、薄紫色の髪をした垂れ目の少女は嬉しそうに笑った。
「ルイ君凄いね!これなら一気に数が減らせるよ」
黒い手袋をギュッと嵌め直しながら言うレイチェルに、ルイはフルフルと首を振る。
「でもあんまり多用は出来ない。いくら水場だからって召喚魔法はやっぱり魔力の消費が激しいからな」
「やっぱ使い慣れてない魔法は長く持続できない?」
「あぁ…、やっぱりSランク魔法は疲れる…」
召喚魔法は特定の例外を抜かすと全てがSランクに属される。Sランクは扱いが難しく魔力消費が半端ない。その分絶大な攻撃力を誇るが、扱い慣れていない人が使うと体への負担も大きかった。
ファンタズマ内でもSランク魔法を完璧に扱いきれる人間はほぼウィクレッタやゲルゼールに限られている。故に入隊した次の日の模擬戦闘でチルデがSランク魔法を使ったことにヴィクナ達は驚いたのだ。
今回ルイは水があることによってなんとか発動することが出来た。だが、魔力の消費が激しいのと、魔法の強さの反動で体内を流れる魔力の流れが乱され、下手をすれば身体障害を起こすこともある。それを防ぐために、通常は長時間形を具現化し戦う召喚獣を一回の技の発動で引っ込めたのだ。
「そっか。じゃ、少し休んでて!ルイ君の分も私頑張るから!!」
少し無理をして敵を薙ぎ倒してくれたルイに対し、レイチェルは任せて!と微笑み、それを見てルイは小さく頷いた。
今はルイの魔法で殆ど周りの敵は消えた。暫くは休めるだろうがすぐに敵は自分達を見つけてやってくるに違いない。その時、今のルイには完璧に全ての敵に立ち向かえる自信はなかった。幸いレイチェルは俊敏な動きを得意とする。まだ大分元気そうだし、少し魔力が回復するまで周りの敵はレイチェルに任せることにした。
「そう言えば、シルハ君とマーダ君…どこにいるのかな?」
レイチェルは口の前に人差し指を当てながら思い出したように辺りを見回す。レイチェルの言葉にルイも見回してみたが、シルハやマーダの姿は見えなかった。
「ま、どこかでやってるだろ。ああ見えて、シルハもマーダもなかなか強い」
「うん!そうだね!」
今回のバトルフィールドは半端なく広い。この位置から見えない場所で2人が闘っていると思った。そしてそれが正解。確かに森の中の2人の姿をここから捕らえることは出来ない。ルイもレイチェルも2人の戦闘能力を信じ、自分達のことに集中することにした。
しかし、お決まりだがやっぱり彼等はピンチである。

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