今更説明しましょう
気付けば敵は動きを止め、思い出したかのように値が袈裟掛けに吹き出す。フロウィは敵の方に体を向け、敵の返り血を身に浴びていた。
あれはラグスが剣を構えた瞬間だった。敵に気付くとフロウィの両手が一瞬発光する。そのままフロウィが後ろを向き様腕を袈裟掛けに振り下ろすと、敵はその軌道にそって血を吹き出したのだ。
フロウィを見てみれば、手がまるで巨大な鎌の刃のようになっている。振り下ろした右手の刃には赤い血がのっぺりと張り付いていた。
「これが私の攻撃手段、"トランス フォーム"っていう魔法で、自分の体の一部を変化させることが出来るの」
フロウィはそう言いながら手をもとの状態に戻す。ラグスは唖然としてその様子を見ていた。
「魔法…?呪文念唱無しで魔法だと?」
ラグスは元に戻った手を見ながら訝し気に睨む。フロウィは何がおかしいのかクスクス笑うと、もう一度手を鎌に変身させた。
「これはね、発動を待機状態に出来る特殊な魔法なんだ」
「待機状態だと?」
そんなとが出来るのかとラグスは目を見張る。魔法の知識はあるつもりだが、特異魔法には様々な種類や効果があり、実際特異魔法を使えないラグスは特異魔法に関しては知らないことが多かった。
「うん、これは一度呪文を唱えると解除するまで効果が持続するの。だから一回の呪文で何度も変身できるし、待機状態にすれば魔力の消費も抑えられるんだ」
一回の呪文で効果が持続すると言えど、変身中は徐々に魔力が削られるらしい。待機状態にすれば無駄な魔力消費を削減でき、また丸腰相手だと敵の油断も誘いやすくなる。
フロウィは手を待機状態にすると、ラグスににっこりと微笑んだ。
「やっと目を見て話してくれたね」
その言葉にラグスはまた顔が真っ赤になる。
「う、うるせぇ!!」
ごまかすために悪態をつきながら勢いに任せてバッと顔を背けると、湖が目に入った。
バシャーン――
その時、湖から巨大な龍が姿を現す。水で出来た体が透けた龍は口から大量の水を放出すると次々にテロリスト達を薙ぎ倒していった。
「召喚獣"リヴァイアサン"か?」
「そうみたいだね、水使いの人が居るのかな?水場では水使いの人は力が上がるからね」
ラグスの言葉に答えながらリヴァイアサンと呼ばれた巨大な龍を見ながらフロウィは嬉しそうに微笑んだ。
属性魔法というのは自分でその属性の物を作り出さなければならない。水なら空気中の水分に魔力を送り込み凝結させて生み出さなければならないし、氷ならさらにそれを冷やさなければならない。
炎にしたって湿気があるとよく燃えないから魔力で湿気を追い払って乾いた空気の中で魔力同士をぶつけ、摩擦を起こすことで炎を生み出すのだ。
属性魔法は自然環境の影響を受けやすく、雨の日は炎より水のほうが発動しやすくなるし、湿気が少ない渇いた日はその逆になる。
今日はカラリとした晴天なので炎の方が強くなるが例外がある。
それは環境だ。水場があれば、始めから水を作り出すより元から存在する水を使うことによって魔力の削減が出来る。また、その削減出来た分の魔力でさらに上のランクの魔法を使うことも可能なのだ。
「水使いがいるなら随分有利に進められそうね」
フロウィはそういうとリヴァイアサンを生み出した隊員を見つめた。

[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!