永遠を刻む少女
「呪術師とは対価を支払い相手を呪うことの出来る人間の事だ」
ラクシミリアは口を開くと簡単な呪術師の説明をした。
「対価…ですか?」
シルハはラクシミリアの口から飛び出した単語に眉を潜める。
対価。それは相手を呪うのに見合った物を差し出すコト。
相手を呪うことにそれなりの対価を支払う事は何となく納得がいく。人を呪うにはそれくらい必要だろうし、回復するとは言え、魔法も己の魔力を対価として支払っているも同然なのだから。
首を傾げたのはそれがラクシミリアが100年以上若いまま生きていることと何の繋がりがあるのかがさっぱり理解が出来なかったらだ。
「呪術師は呪を授けるときに対価を支払うのではなく、この世に生まれ落ちたときに対価を奪われるのだ」
ラクシミリアがそういうと、少しだけだが表情が曇ったような気がした。
「貴女が奪われた対価は…」
「私が奪われた対価は"時"だよシルハ。14の時に意図せず初めて呪を使ったとき、私の時は刻むことをしなくなった。以来数百年という年月(としつき)をこうして歩んで来たのさ」
つまりはラクシミリアは時の経過、何者も逃れることが出来ないという"死"、ありとあらゆる束縛を無くし永遠に近い年月を生き抜いて来たというのだ。
あまりに現実味がない話しにシルハは渋い顔をした。
「信じられないのだな。だが本当だ、現に貴様はイーディテルアに逢って証明してもらったではないか。彼女の口から聞いたのだろう?私の名を」
確かにそうだ。イーディテルアは確かに自分を魔女にしたのはラクシミリアだと言っていた。そして目の前のラクシミリアはイーディテルアを知っている。イーディテルアの愛称を言ったり、魔女と言う単語を使ったあたりから嘘を言っているとは思えなかった。
それにイーディテルアを100年も生かす呪を施した本人が何百年生きていたって何となく不思議ではない気がする。たが、目の前の少女は自分よりどう見ても年下で、何百年も生きているようには感じれなかった。
「それが呪術だ。人を呪う対価として私は時を…成長を失った。貴様などより幼き頃に成長を止めたのだから年下なのは必然、なにも不思議な事ではない」
シルハの心境を読み取ったかの如くラクシミリアは疑問に的確に答える。
まさか…心が…
「『心が読めるのか?』。その通りだ、深層心理までは読み取れないが突発的な感情なら読み取れる」
ラクシミリアの言葉にシルハは驚き目を見開いた。呪術師は全員人の心が読めるのだろうか?
「今世界には私しか呪術師はいない。だが、呪術師は全員読み取れたらしい。それが呪われし者の共通に得た能力(ちから)だ」
もはや言葉いらず。ラクシミリアはスラスラとシルハが抱いた疑問に答えてゆく。心が読めるのは充分にわかったが、シルハはあることに引っ掛かった。
「なぜそんなにスラスラと敵に情報を…?」
そうだ。呪術師は未知の存在。ラクシミリアさえ黙っておけばその情報が漏れることはなく、有利にことを進められる。なぜわざわざ情報をシルハに教えるのだろうか。教えたところでなんも自分には不利にならないということか、はたまた教えたところでシルハ達を生かして帰すつもりがないからなのか。
「どちらでも無いよシルハ」
考えていると、ラクシミリアはクスリと嘲笑を浮かべる。そして、続いた言葉にシルハは我が耳を疑った。
「貴様らが私を殺しやすくするためだ」

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あきゅろす。
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