約束
一体何人斬ったんだろう…。
シルハは血の海の中で立ち尽くしながらそんな事を考えた。
自分には肌にも服にも真っ赤な液体がこびりつき、ベトベトと気持ち悪い。銀色の髪にも赤が落ちて、妙にハッキリ色を強調していた。
「シルハ君…大丈夫?」
レイチェルはボーッとしたシルハに気付いたのか、心配そうな表情をしながら顔を覗き込んできた。彼女の白い肌や薄紫の髪にも赤い血がこびりついている。だが、格闘家の彼女は、自分ほど酷く血を浴びてはおらず、ホッとするのと同時に、酷く自分が汚く見えた。
「凄い数殺ったが…まだまだ一杯いるな…」
ルイの言葉にシルハは頷く。まだ辺りを見回せば、始まった頃と同じ激しい戦いが繰り広げられている。変わったのは、地面に転がる死体の数と、辺りを染める真っ赤な血液が広がっていることくらいか。
「ねぇシル兄…。いつまで続くの?」
マーダも、小さな体に一杯の血を浴びていた。だが、シルハはマーダにトドメはささせていないため、少量の返り血と、この様な場に居るために撥ねた血が付いただけである。いい加減終りの見えない血の舞にマーダは嫌気が差したのか、可愛い顔を不機嫌に歪めた。
「さぁ…こんだけ居るとね…」
マーダの顔にシルハは苦笑いを浮かべる。流石にいつまで続くか等はわからない。ただわかるのは
「しばらく終わらないだろうね…」
「あっ!居たっすよ!!!シルハ君!!!」
「ん?あっ!」
4人が会話をしていると、突然背後から声が掛る。聞き覚えのある声に振り返ると、そこには7番隊の新入隊員達が居た。
「シルハ!!!無事か!!!?」
「見ての通り。テルも平気そうだね」
「おうよ!」
テルの笑顔を見て、シルハもホッとして笑みを溢す。昔から見慣れた懐かしい笑顔に、シルハは安心感を感じた。
「皆も無事みたいね…」
「そっちもね。よかった」
ウルテの言葉に頷きながら、シルハは7番隊の新入隊員達7人が全員無事なことを確認し、安堵の笑みが溢れる。やっぱり、誰かが死んじゃうのは嫌だ。
「やになっちゃいますね…。3隊合同って言うもんだからもっと楽な仕事かと思ってましたよ」
皆で笑いあっている中、7番隊最年少のアテナがはぁっとやる気なさそうに声を出す。その台詞に満場一致で苦笑いを浮かべた。
確に、3隊合同と言うわりには相当てこずって見える。それだけ今回の任務は厄介で、テロリストの力が強くて、1番隊だけでは対処がしきれなかったのも頷けた。
「仕方ないッスよ。それだけ敵が強いんス」
ヨフテの言葉に、アテナはわかってますよと小さく頷いた。わかっちゃいるが、愚痴が言いたくなるのだろう。
「少しでも早く終わらせないならぁ〜。皆頑張ろぉねぇ〜」
にへっとのっぺりした笑みを浮かべながらクイルゼが正論を吐く。
「よっし、やるぞ!!!」
「また集まろう。誰も欠けちゃ駄目だよ」
テルが力を込めて気合いを入れる中、シルハは全員に声を掛けた。この中の誰かが居なくなるなんて考えたくもない。それは皆同じ様で、シルハの言葉に11人は頷き合うと、また敵に向かって走り出した。

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あきゅろす。
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