準備完璧
車はどうやらやっと砂利道を抜けたらしい。ガクガクと上下に揺さぶられる振動がおさまってから少し走ると、車はゆっくり停車した。停車と同時にドアが開き、隊員達は外へと出る。シルハも外に出ると、眼の前に1番隊の野営地が広がっていた。
野営地の側では、タルットとフロウィが何やら話こんでいる。話に区切りがついたのか頷きあうと、2人は野営地へ足を踏み入れた。
「しばらく待機でいいのかな?」
「どうだろうな」
「まぁ待つしかないよねぇ」
シルハの言葉にルイは顔をしかめる。考えても仕方が無いと、レイチェルはその場にしゃがみこんだ。
「シル兄〜…お尻が痛いよぅ…」
マーダは砂利道の振動が相当堪えたのか、お尻を摩りながら泣きっ面になる。シルハはマーダを抱きかかえ、「すぐ痛くなくなるよ〜」と呟いた。


「おっはよ〜タルット、フロウィ♪」
「おはよ」
「おお来たか!」
タルットとフロウィが着いたことを報告するためにテントへたどり着くと、大変な状況とは思えないほど和やかに迎えられてタルットとフロウィは一気に気が抜けた。
「おはようございます」
「おはようございます、ザルディ隊長。おはよう、タピス、ヴィクナちゃん」
各々挨拶を済ませると、直ぐ会議をしていたらしいテーブルに集まる。
「お前らも地理を記憶してくれ。敵はこの森を野営地にしている。ここは開けた場所、今回のメインはここでのガチンコ勝負だな。森は敵の罠が張ってあるからあまり足を踏み入れない方が利口だろうな」
地図を見れば、現在地の見方側の野営地が高岱にあり、敵は眼下に広がる平野を少し行った場所にある森に陣を張っている。森が入れないとすれば、ほぼ平野での勝負を強いられる形になっていた。
「敵さん方はお前らの到着を知らない。まず1番隊だけで攻め入る、間を置いて2番隊、7番隊と続いてくれ」
「人数が急に増えて敵さんびっくりってわけだね」
ヴィクナは楽しそうに笑うと、地図を閉じた。
「じゃ、アタシらはその意を下に伝えてくる。1番隊はさっさと準備整えてちょ」
「ウチは準備完璧だぜ?もう出陣出来る」
ヴィクナの言葉に、ザルディは煙草を吹かし、ニマリと笑みを作りながら言う。脂が手に入ってやっと余裕が出来たようだ。
「じゃあさっさと出陣しろ。行くぞフロウィ」
「えぇ」
タピスはそんなザルディを横目で見ると、直ぐ様テントを出ていく。フロウィは一礼をしてからタピスに続いてテントを出た。
「じゃ、アタシらも行くわ。ザルディ、さっさと切り込みに行けよ?ウチやタピスの隊の奴らが暇しない様にさ」
「わーってるって。じゃ、俺らも出ますかな」
ザルディ、ヴィクナ、タルットはテントを出ると、各々の方向へ歩んでいく。ヴィクナは最後にザルディの方を向くと、大声で叫んだ。
「アタシが行くまでくたばんなよおっさん!」
「誰に言ってやがる小娘が!俺様は無敵のザルディ様よ」
ヴィクナの言葉にザルディは振り向いて右手を上げる。あははっとヴィクナは笑ってから2番隊員が待つ場所へとタルットと向かった。

[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!