女尊男卑
ちゃんと着物を来てテントから出ると、ヴィクナがチョコンと立っていた。
ヴィクナも昨夜飲み会だと言って飲みまくっていためか、二日酔で少し青い顔をしている。酒にあまり強くない癖に飲みすぎだとタピスは舌打した。
「ヴィクナ、生きてっか?」
ザルディは少しフラフラとしたヴィクナに話し掛ける。ヴィクナは青い顔をザルディの方へ向けて、無理に笑顔を作ろうとした。
「うぃ…吐かない、様に…きぼづげぶ」
「最後なんて言ってるかわからねーよ」
最初はうまく行ったが、最後まで気力が持ってない。ヴィクナは「おぇ〜っ」と言いながら地面を見つめていた。
「リズが薬持ってる。今からゲルゼールの所に行くからそこで薬もらえよ」
「そうさせてもらうよ…。任務に支障が出る…」
ザルディの提案にヴィクナは力無く頷く。そしてザルディが歩き出すと、タピスは面倒だがヴィクナを気遣いながら一緒に歩き出した。
「ヴィクナ〜〜〜!!!」
その時、急に前方から駆け足の音が聞こえる。その存在を見て、タピスは露骨に嫌な顔をした。
「あ〜んヴィクナ!合いたかった〜〜〜!!!帰還日が合わなくて全然会えなかったから、2番隊が援護に来てくれるって知って、私、すっごい嬉しかったのよ?や〜ん!ヴィクナってば相変わらずちっちゃくて細くてつり目具合いが超可愛い〜〜〜〜」
そう一気に喋りながら、前方から走ってきた女は思いきりヴィクナに抱きつく。二日酔い中のヴィクナは、気持悪さに拍車がかかり、うぅっぷ…と吐くのをなんとか堪えた。
「ヴィクナに会えて嬉しいわ〜〜!後一人、余計な奴がいるけど…」
そう言いながら女は横目でチロリとタピスを見る。目が合うと、お互いギロリと睨み合った。
「久しぶりねタピス。相変わらず男女っぷり発揮した容姿してるじゃないこのオカマ!」
「はっ、そういうテメーも相変わらず変態だな、ミク。朝からキモイ事言ってんじゃねぇよ年中発情期女」
お互い主張を終えるとバチバチっとお互いの間に稲妻が巻き起こる。
ミク・リエル。1番隊のゲルゼールにて、フォスター時代のタピス達の同期。性格は…
「ていうかなんでタピスなの?私の可愛いフロウィは何処?」
「いつフロウィがお前のものになったってんだよ。近寄るな、変態菌が移る」
「変態菌!!!?愛のラブラブバクテリアと呼んでくれない?私はあの可愛くて優しくてボンキュッボンでチャーミングなフロウィに会いたいの。あんな可愛いから男と言う害虫がたかりそうで怖いわ。汚染されてないか合って確かめなきゃ不安でしょうがない…。だからフロウィを連れて来なさい!あんたみたいな男女なんか御呼びじゃないんだよ」
「俺だってテメーなんか顔も見たくないってんだ。任務に文句つけてんじゃねぇよ馬鹿が。しかもラブラブバクテリアってなんだ?変態菌より大分体に害がありそうだぞ?テメーの存在自体が相当害虫。だいたいそこいらの男よりずっとテメーのが危ないっての。絶対フロウィに近付けさせねぇ」
「オカマが私の純粋な愛を馬鹿にするんじゃないわよ!だいたいあんたに何の権限があってフロウィと私を遠ざけるの?もしかして…フロウィはすでにあんたの毒牙に…!!!?いや!そんなの耐えられない…!!!私の可愛いフロウィが男に取られるなんて嫌!!!」
「発言が一々キモイんだよ!だいたい俺はオカマじゃねぇふざけんな!この女好き」
「男なんかより女の子の方が大好きよ!!!愛してるわよ!!!なんか悪い!!!?ていうかフロウィの部分は否定しないのね!否定しないのね!!!」
「否定したとこで聞かねーじゃねーか!」
こんな感じ。
女尊男卑思想ってか女しか愛せない生粋の女好き。好きな物は可愛い女の子。嫌いな物は男。特に女みたいな顔した男は究極的に嫌い。そんな思考をした女性である。
こんなやりとりはタピスとミクの間では合うたびに交されるが、今だミクに抱きつかれたヴィクナは、耳元で叫ばれて相当参りながら、口元を手で押さえた。

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