朝からの災難
おぃ…あ……おき…
「んあぁ…」
何かに体を思いきり揺さぶられ、ザルディは不機嫌そうに眉間に皺を寄せながら薄く目を開いた。
「朝だぞ…起きろ。…たくっ…地べたで寝てんじゃねーよ」
声が聞え、ザルディはまだ眠い頭を回転させようとなんとか目を開く。すると、視界に黒髪を垂らした美人が飛込んできた。
「朝もはよから頂きます!!!」
「なぁっ!!!?」
まだ半分寝惚けたザルディはわけのわからない事を口走りながら本能的にその美人にガバチョッと抱きついた。
「何寝惚けてやがるこの変態糞親父―――――――!!!」
その途端、耳元で耳鳴りがするかと思うほどの罵声を浴びたあと、ザルディは顔面に思いきり衝撃を受けて後ろにすっころんだ。
美人は殴り飛ばし、ザルディが自分から離れると同時にテーブルにあった水さしに手を掛ける。そしてそれを横に振ることによってザルディに水をぶちまけた。
「つべてっ!!!」
思いきり水を頭から被ったザルディは、顔面の痛みと水の冷たさでやっと目を覚ましたのか、目の前の美人を見て落胆の表情を浮かべた。
「なんだタピスかよ…。せっかく朝から美人がお相手してくれるかと思ったのによ」
「テメー朝からなんつー桃色思考してやがる」
ザルディはタピスの言葉を聞きながら顔面を押さえる。指に生暖かい液体が手に付き、指を見てみれば赤い液体がぬたりとこびりついていた。また顔に指を近付け、流血原を探ってみると鼻からボトボトとこぼれ落ちている。朝から災難な目に合ったとザルディは思った。
「オメーが悪いんだぜタピス、髪なんかほどいてやがっから…」
「誰のせいだ。散々テメーの飲みに付き合わされたあげく、酔って俺の髪飾り奪いやがってよ。どこに隠した」
そのタピスの言葉に、ザルディははて?と首を傾げる。タピスは拳に魔力を込めて殴りかかる準備をした。
「あぁ!!!確かミクに預けたわ」
「ミクぅ!?」
それを見たザルディは慌てて手を前に突き出しながら昨日の記憶を呼び戻す。ミクと言うのは1番隊のゲルゼールの一人。タピスはその名前を聞いたと同時に思いきり顔を歪めた。
「なんでよりによってアイツに…」
タピスはそれから盛大に溜め息をつく。拳の魔力が消え去った事を確認してからザルディは立ち上がった。
「ミクにノリで預けちまってな。一緒に取りに行ってやるから。行こうぜ」
ザルディはそう言うと出口に向かって歩き出す。タピスはそれを見て、一回呆けてから慌てて声を掛けた。
「ちょ、テメーその格好で行く気かよ」
タピスは慌ててザルディの着物をテーブルから取るとそれを投げつける。ザルディはなぜタピスが自分の着物を持っているのかと思い自分の姿を見ると、まさにすっぽんぽんと言う言葉がふさわしい格好をしていた。
「タピス…まさか俺様が寝てる間に…」
ザルディの言葉にタピスはピクリと青筋を浮かべると、取り合えず黙ってザルディの下顎を蹴り上げた。


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