欲しいものは守れる力
星が溢れ落ちてきそうな程の満天の空。シルハは憧れの理由が分かると小さく口を開けた。
「…多分…守る事の出来る力に憧れたんです」
シルハはポツリと呟く。フロウィは黙ってシルハを見つめながらシルハの言葉に耳を傾けた。
「俺、占拠された時、目の前で父が殺されました。何も出来ませんでした」
父は自分の目の前で崩れ落ちた。必死で走ったが追い付けなかったのだ。父の最期の姿が未だに忘れられない。
「俺には何も出来なかった。だから…それを出来る力を持っていたケイル隊長に、凄く憧れたんです」
シルハは一通り話終えるとフロウィの方を見て、にっこりと笑う。切な気な笑顔に、フロウィは胸を締め付けられる思いがした。
「シルハ君は…力が欲しいの?」
「はい…」
頷くと、シルハは切な気な表情から柔らかい笑顔に変わる。
「守りたいモノを守れるだけの力が欲しいんです」
シルハの言葉にフロウィは目を細める。それから最後にもう1つ、シルハに質問をした。
「タピスのしてること…貴方にとっても無駄じゃ無いよね…?」
「はい」
フロウィの問掛けに即答で頷くシルハ。それを見てからフロウィは微笑んだ。
「うん、そっか」
そう頷きながらフロウィは瞳を閉じる。彼のしていることは、双方の糧になっていることを知ると、フロウィは安堵の溜め息をもらした。
「フロウィさんは、どうしてフォスターに?」
シルハは自分の話題が終わったことを悟ると、話題が尽きる前に話題を切り出す。フロウィは少し驚いた様に目を開いてから、大きな目を細めて微笑んだ。
「私ね、片親だったの」
フロウィはそう言うと顔を上げる。
「私が産まれた町は治安が悪くてね、お父さんは私が産まれる前に人と揉め事して殺されちゃったんだって。殺人が毎日のように起こる町だったから…」
シルハはそれを聞いて体が固まった。フロウィは柔らかな表情をしているが、それは相当酷な話だ。
「お母さんはそんな土地で私の事を必死で育ててくれたの。それこそ…毎日食べるのに必死だったから…そこいらの男に体を売ってまで私に食べさせてくれたわ。止めて欲しかったけど…私にはどうしようもなかった…」
フロウィはそこまで言うと瞳を閉じる。それからまた黄緑色の瞳を開き、シルハの瞳と目を合わせた。
「いつしか、町は更に治安が悪くなった。お母さんは、私を守るために私を手放す事に決めたの。そして、私が行くならファンタズマが良いって言ってフォスターに入ったの。食いはぐれる事は無いからその点では安心だし、それに…」
フロウィの瞳がキラキラと輝き出す。目がうるんでいるのがわかった。
「私も…何も出来ない自分が嫌だったから…。強くなりたかったの」
シルハはあまりにも暗い内容に質問をした事を後悔していたが、この言葉に目を開く。
「私も、守れる力が欲しかった」
おんなじだね、そう言ってフロウィは微笑む。シルハもその笑顔につられて笑顔になった。
「付き合ってくれてありがとうシルハ君。もう帰ろっか」
「はい」
フロウィはシルハの返事を聞くと足り上がり、服をパンパンと払う。シルハも立ち上がり服を叩いてから2人でテントへと戻った。

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あきゅろす。
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