丘の上の会話
外に出れば霧は晴れ、美しい星空が広がる。明日は晴天だろうとシルハは思った。
「星が良く見える良い場所見付けたの!そこ行かない?」
「行きます」
フロウィの提案にシルハは頷く。フロウィは「こっち」と言ってシルハを案内した。
「元気になって良かったわ。フロラ隊長に治して頂いたんですってね。ナナハに聞いたわ」
前を歩くフロウィは後ろを振り向いてシルハに話し掛ける。後ろを向いた反動で髪飾りがカチャリと揺れた。
「はい。本当に凄い魔法ですね」
「よね、ファンタズマ内でも使える人少ないのよ」
私も出来ないのっと舌をチョロリと出して恥ずかしそうに顔を赤らめた。本当に可愛い人は仕草も可愛い。
「あの…フロウィ副隊長…」
「副隊長なんて、呼び捨てとか…無理ならさん付けで良いわ」
フロウィは副隊長と呼ばれるのが擽ったいのか、少し身をよじりながら言う。シルハは少し考えてから頷いた。
「では…フロウィさんで」
「わかったわ。どうしたの?シルハ君」
フロウィは満足そうに頷くと、シルハに話すようにと促す。シルハは小さく頷いてから質問をした。
「あの、フロウィさんってタピス隊長やナナハさんとは…」
「『どういう関係か?』って?」
「…はい」
フロウィに質問を先読みされたシルハは、ヴィクナにも先読みされた事を思い出して、自分って思考が単純なのかなぁっと苦笑いしながら答えた。
「ただのフォスター時代の幼馴染みよ。コレは"友情の証"って事で、私がフォスター時代に作ったの」
そう言うと、フロウィは髪飾りに触れてから恥ずかしそうに笑う。
「こんなのなのに2人ともずっと付けててくれてるの」
「そうなんですか」
3人がお揃いの髪飾りを付けている理由と、隊長であるタピスを呼び捨てにしている理由がわかり、シルハはほぉっと納得した様に頷いた。
「あ、ここ!この丘の上!」
フロウィは目的地に着くと、軽々とした足取りで坂道を登っていく。シルハは慌てて後に続いた。
「わぁ…綺麗…」
一面に広がる星空に、シルハは歓声を漏らす。フロウィは嬉しそうに微笑むと、濡れた草の上に腰を下ろした。
それを見て、シルハも隣に座る。すこし冷たいが、直ぐに成れるだろうとそのまま腰を落ち着けた。
「ねぇシルハ君、タピスの修行はどう?」
「あ、とても良いです!お陰で随分とコントロールが効くようになりました」
シルハがそう言うと、フロウィはホッとしたように微笑む。それから空を見上げた。瞳に星が反射してキラキラと輝く。
「シルハ君…変なこと聞いて良い…??」
「 ? はい」
フロウィの顔から可愛らしい笑みが消えている。シルハは少しドキドキしながらフロウィに聞き返した。
「シルハ君は……なんでファンタズマに入隊したの…?」
真面目なフロウィの声。シルハはフロウィの問いに少し目を泳がせてから答えた。
「実は…憧れたんです。ケイル隊長に…。俺、一度街を占拠されてて、その時任務でそいつら倒して下さったのがケイル隊長率いるファンタズマの部隊だったんです」
「そっか…ケイル隊長の何に憧れたの?」
フロウィのその問いに、シルハは思わずフロウィを見つめる。フロウィも空から視線を落とし、シルハと目を合わせると、自傷気味に笑みを作った。
「…変なこと聞いてごめんなさい。無理に答えなくて良いわ」
「あ、いえ!そうじゃないんです…!ただちょっと自分でも考えちゃって…」
そう言えば、かっこいいとは思いつつも、自分は何に引かれたのだろう。シルハは考えるようにフロウィから視線を外し、星を見る。そして、思い出したくもない光景がシルハの頭をよぎった。
あぁそうか。簡単だ。
シルハは理由が分かると小さく口を開けた。

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あきゅろす。
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