優しい風が吹く中で
「隊長…アレ、どういう事だったんですか?」
ミイラみたいに茶色く干からびたイーディテルアを地面に埋葬しながらシルハはヴィクナに尋ねた。
「アレって?」
「イーディテルアが100年前の人間だって…」
「あぁ…」
シルハの質問に、ヴィクナは笑うと空を見上げた。
「多分、魔力の影響ね」
「魔力ってそんな力もあるんですか?」
「ん〜と、簡単に言うと、人の魔力の色が皆違うのは知ってるよね?」
「はい…」
シルハの答えにヴィクナは微笑むと、シルハの質問に答えてくれた。
「魔力は人によって違う。そんなのを体に取り込むと必ず影響があるわけ。イーディテルアの場合は呪いにより美と、半永久の命だったってわけね」
イーディテルアの上に土をかけながらヴィクナは言った。彼女の付け爪は土を掘ったことで見事に剥がれ、地の爪には土が入り込んでいる。それでも気にせず、彼女は土を掛け続けていた。
「そんな体の代償は魔力が無くなると死ぬって事ね」
シルハも土で手を汚しながら、あぁなるほどと思った。魔力を消費した途端、彼女が少し老けて見えたのはそのせいだったと納得したからである。
「100年も美に固執して生きてきたんですね…」
完全に土に埋まり、見えなくなったイーディテルアを見ながら、シルハは悲しそうな顔をした。
最後の彼女の笑顔はとても美しかったのに…。
「…苦しい…?」
「え?」
ヴィクナの突然の問掛けに、シルハは目を丸くしながらヴィクナを見た。
「イーディテルアの事で胸が苦しい?」
「…」
正直良くわからない…。
シルハはゆっくりヴィクナから目を背けながらまた土を見つめた。
「最初から……あぁやって笑えば良かったのになって…」
イーディテルアの笑みはいつも傲慢で、自分の美しさをいつも半減させていた。
「ああやって笑えば、きっと呪われずに済んだのに」
「かもね」
完全に埋め終り、ヴィクナはポンポンと土を固めながらヴィクナはシルハに答えた。
「でも出来なかった。それが今の結果。だけどさ」
ヴィクナは言葉を切り、シルハを見る。シルハはイーディテルアを救いたかったのだろうか?彼女を呪いの被害者とでも見ていたのだろうか?辛そうな表情のシルハにそっとヴィクナは寄りかかった。
「隊長…?」
「イーディテルア…最後に笑えて良かったじゃん」
「!」
シルハの肩が少し動いたのをヴィクナは感じた。
「シルハのお陰だよ!」
「そう…でしょうか?俺は何もしてません」
「そ〜かな〜?」
シルハの沈んだ声に、ヴィクナは陽気な声で返す。寄りかかるのを止めて、ヴィクナはスクッと立ち上がると、シルハを見てニコッと笑い、シルハに手を差し延べた。
「帰ろ!シルハ」
「…はい!」
差し延べられた手を取り、シルハも立ち上がると、出口に向かって歩きだした。
「あ!隊長!!」
「ん?」
その時、急にシルハは声を上げ、ヴィクナは驚きながらシルハを見つめた。
「行方不明の女の人は…!」
「あぁ〜…。皆に探して貰お♪♪アタシら頑張ったし、休も〜ゼ」
ヴィクナはニッと笑うと、呪文を唱え、箒を取り出した。
出した箒に跨り、シルハにも後ろに跨る様に促す。戸惑いながら後ろに跨ると、ヴィクナは呪文を唱えて空へと舞い上がった。
「ねぇシルハ…?」
ヴィクナは気持良く吹き付ける風を感じながら、後ろに居るシルハに話し掛ける。だがシルハから返答はなかった。返答の代わりに、ヴィクナの背中にシルハの頭が持たれかかる。背中でシルハの銀髪が揺れるのを感じた。
「シルハ?」
ヴィクナは不思議に思い、後ろを向く。すると、情けなくウツラウツラしてるシルハの顔が見えた。
「寝ちゃったの…?」
ヴィクナはヤレヤレと言う顔をしながら前を向いた。
「お疲れ様…振り落とされんなよ」
ヴィクナはそう言うと、速度を緩めながらゆっくり飛行した。

[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!