揺れる銀髪
ムカつくムカつくムカつく…!!
攻撃が当たらない上になんか前の奴らは自分無視して男は女を守ろうと必死だし、女はそんな男を見て嬉しそうに微笑んでる。
こんな屈辱は初めてだわ…!
イーディテルアは激しく2人を睨み付けた。
「凄い凄いシルハ!"ツイスター"モドキだモドキ!!!」
「も…モドキ…?」
ヴィクナはねじれ切れた枝をみて子供みたいに騒ぐ。シルハはそんなヴィクナを見ながら目を点にしていた。
「シルハ!"ツイスター"知ってる?」
「えっと…そんな魔法があるんですか…?」
「うん!呪文教えたげる。今の感覚でやってみ☆」
そう言うとヴィクナは耳元で呪文を囁いた。
「アタシは"ツイスター"苦手なんだ…。シルハ、出来たらすっげーよコレ」
そのあと顔を話してニッと笑う。シルハは困ったように眉を下げた。
「た、隊長が苦手なら俺出来ませんよ…!」
「ものは試し!やってみ!」
ヴィクナは嬉しそうに微笑み、目はキラキラと輝いていた。これは、そう。期待の眼差しってヤツだ。裏切ったら可憐な飛び蹴りが後頭部にクリーンヒットしそうな予感満載で、シルハはサッと顔から血の気が引いたのか分かった。
「だ か ら …」
コイツら…何度言えば…
「私を無視するな…!」
イーディテルアの罵声と共に木の動きが激しくなる。シルハは交すのが精一杯になり、魔力を練り込む暇が無かった。
「くっ」
頭を吹き飛ばそうと横切りにされた枝をヴィクナを蒲うようにしゃがみ込んで躱す。
その隙に背中を貫こうと勢いよく突き出してきた枝を左側に飛びながら躱した。
「あぁぁあ!!」
その時、急にヴィクナから苦しそうな悲鳴が漏れる。ハッとしてヴィクナを見ると、苦しそうに顔を歪めたヴィクナが居た。
「た、隊長!!?」
「シル…ま、また魔力…やら、れた…」
ヴィクナは途切れ途切れに話す。息遣いは一気に荒くなり、シルハの首に回していた手がズルリと重力に沿って落ちた。
顔色は青ざめ、かなり魔力を失った事が一目でわかった。
「た、隊長!しっかりして下さい!!」
シルハは思わず足を止め、ヴィクナの顔を覗き込む。青ざめた顔をしたヴィクナは、意識を手放す寸前だった。
「私を無視するからそうなるのよ!死ね!!」
イーディテルアは手を前に突き出すと、木々の枝は一斉にシルハとヴィクナへ襲いかかった。
「《気の流れは螺旋を描く》」
シルハはそんな枝には目もくれず、ヴィクナの方だけを見ながら小さく呪文を唱えた。
バギバギ――
その途端に、木片が辺りに散らばる。イーディテルアは何が起こったか分からずにただボーッと目を見開いていた。
「…へ?」
散々になる木片がスローモーションの様に宙を舞う。
それは2人に襲い掛っていた枝が、全て捻り切られた時に産まれた木片だった。
ドサドサ――
幹から切り放された捻れた様になった枝は、音を立てて地に崩れる。
「終りです…イーディテルア」
急に下から声が聞こえたかと思うと、イーディテルアの視界が一気に回った。
サッキまで森の中の風景を写していたイーディテルアの瞳には、青く晴れわたった空、そして、自分を見下ろす少年の無表情の顔が写っていた。
少し長めの銀髪が、風にヒラヒラ揺れ、日の光を浴びてキラキラ輝く。
キレイ…
不覚にもイーディテルアはそんな事を思った。
どうやらイーディテルアはシルハに押し倒された様だ。自分にのしかかり、剣を自分の顔の真横に突き付けていた。
「終りです」
もう一度シルハが言うと、また風に銀髪が揺れた。

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