魔ではなく呪
―そなたはそこまでして美しくありたいのか?

ありたいわ…私は美しく…
いいえ…そうじゃない…私は…美しいの。そう…誰よりも

―そう叫ぶ心が醜いのを理解出来ないのだな

私は醜くなんかない…!

―愚かな人間…そなたには"魔女"の名がふさわしい…
イーディテルアは閉じ、暗い世界を作り出していた瞳を開き、ヴィクナを見た。
ヴィクナの胸元に刻まれた黒き紋章。それを見ると苦々しい笑みを浮かべる。
「それは私が魔女と呼ばれる所以…。呪いの力よ…」
イーディテルアはそう言いながらヴィクナに向けて手を上げる。その掌に同じ紋章が刻まれているのをヴィクナは確認した。
「呪い…?呪(じゅ)の魔法にこんなのあったかな?」
口元に笑みを浮かべながら余裕そうに尋ねるヴィクナ。イーディテルアはそれを見て憐れそうな顔をした。
「強がるのが得意なの…?いいのよ?それがなんなのかわからないのは当然だもの…。脅えたって笑いはしないわ」
ヴィクナはその言葉を聞いて笑みを消し、真顔になる。
「一般じゃ知られない魔法って事?なんなのか気になるね…」
「魔法じゃないわ…呪いよ…」
イーディテルアも口元から笑みを消し、真剣な眼差しをヴィクナに向ける。
ただ事ではない空気を感じとり、シルハはどうにもならない体に抵抗するのを止めて、踊りながらその様子を見守っていた。
「魔法じゃなくて呪い?どういうこと?」
ヴィクナはしっくりこないのか首を傾げ眉を潜める。
イーディテルアは口に指を当てながら小さく微笑んだ。
「聞きたいの?」
「参考に是非ね」
シルハはヴィクナの態度に驚いた。
これがウィクレッタとしての威厳だろうか?未知の呪(じゅ)に脅える様を見せ付けず、堂々としている。そんなヴィクナから恐怖心を感じとる事が出来ない。
敵に無様な姿は見せない。未知の恐怖に押し潰されない彼女のシャンとした姿勢に、シルハは魅入っていた。
「いいわ。教えて上げる。あの忌まわしい女の事を」
イーディテルアはその美しい顔に邪悪な笑みを浮かべ、言葉を紡ぎ出す。それは美しいとは到底言えない。憎悪と苦渋に満ちた顔。
シルハはイーディテルアが放つ黒きオーラに身の毛がよだつのを感じた。
「あの女?あんたに呪を掛けた人ね?」
ヴィクナはその気迫にも負けずに笑みを作り出す。イーディテルアは途端に無表情になると、感情を見せずに淡々と語りだした。

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あきゅろす。
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