レイアの力
「ん…?」
ヴィクナは森の奥で渦巻く強大な魔力の波動を感じ、顔をしかめた。
「レイア…どうやら面倒な事になってるみたいだね」
ヴィクナは隣を歩く2番隊のゲルゼール、レイアに話し掛ける。レイアもこの嫌な魔力を感じとっている様で、小さく頷いた。
「ですね…それに何か来ます…」
「魔力の凝縮体…魔獣だね。何体かな?」
ヴィクナは遠くを覗くように背伸びをしながら森の奥を見つめる。レイアは目を瞑って魔力の凝縮体の数を数えた。
「こっちに向かって来るのは5体ですね。森中には大量に居ますよ…数えるのが面倒なくらい…」
「どうやら悪魔さんは大量に魔力を持ってるみたいだね。こりゃ面倒面倒♪」
ヴィクナは本当に面倒と思っているのか、ニコニコしながら近付いてくる魔獣を待ち構える。
「隊長…呑気ですねぇ…ここは私に任せて、魔力の拠点をちゃっちゃと探し出しちゃって下さい」
レイアはヴィクナをあっち行けと言うように手でパタパタと叩く。ヴィクナはその様子をみて苦笑いをした。
「あたしゃ邪魔者かぃ」
「面倒が広がる前にちゃっちゃと終わらせましょ!」
ヴィクナの言葉に反応しながらレイアは武器を懐から取り出す。
取り出したのは鞭。取り出すと同時に鞭を振り、ヒュンと風を切りながら鞭をしならせる。
「じゃ、レイア!任せたよ☆」
軽く手を振りながらヴィクナはレイアに背を向け、まがまがしい魔力を放つ"悪魔"の元へと向かうため、手に持っていた箒に跨ると、空高く舞い上がった。
「さぁてと…」
レイアはヴィクナを見送ってから地上に目を戻した。
それと同時に5体の魔獣が姿を現し、レイアに襲い掛る。
「ちょろいわね」
レイアはニッと笑うと、鞭を振るう。
軌道が見えないほどの超スピードで振るわれた鞭は、魔獣が避ける暇もなくバチィンと激しく痛々しい音を立てて2体を葬る。
「3…」
レイアは残りの魔獣の数を呟きながら背中のホルダーに装備されていたナイフを抜き取り、それを別の魔獣の眉間に投げつけた。
スコンッ――
清々しい音を立てて眉間にナイフが突き刺さると、魔獣はあっと言う間に煙と化して姿を消す。
「2…」
残り2体の魔獣が同時に飛び掛って来たのを、地を蹴って宙を舞いながらひょいと躱すと、着地体制を取りながら魔力を練り出した。
「《黒き雨は鮮血に染まる》」
呪文を唱えると、レイアの前に黒く、10p程の長さの刺が大量に姿を現す。その刺は2体の魔獣に向かって放たれた。
黒い刺はまるで雨のように降り注ぎ、魔獣の体を容赦なく貫き、魔獣は姿を消した。
あっと言う間に5体の魔獣を倒したレイアは、他の隊員の援護をすべく、魔獣が集中している場所を目指して走り出す。
決してヴィクナを追い掛けはしない。それはヴィクナなら大丈夫と信じているから。
苔で足を取られないように注意をしながら、レイアは森の中を駆け回り始めた。

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あきゅろす。
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