コントではありません
ルイ達やシルハとはまた別の場所。暗く湿った森の中で4人の人間が辺りを警戒しながら歩いていた。
それは2番隊のバーサーカー、ラグス、チルデ、セルダ、ユダである。
「気持悪い…」
チルデは湿気が多いい空気に文句を言う。ラグスは俺様的に先頭を歩き、セルダは回りに集中し、ユダは脅えながら歩いていた。
「…!」
その時、先頭を切っていたラグスは何かの気配を感じ、足を止める。続いて他の3人も、その迫り来る気配に気付き、身構えた。
「《全てを飲む渦が如く》」
「《我、無力より有りし力を求めん》」
ラグスは呪文を唱え、いつもの様に抜き身になった剣に炎の渦を纏わせる。
チルデは呪文を唱えると、自分の魔力で巨大な氷の鎌を作り出した。
セルダは手にしていたトンファーを構え、ユダは慎重に2丁の銃をホルダーから抜き取る。
しばらく4人は立ち止まって近付いてくる敵を待った。
ガサガサ――
草や木の葉が風に揺れ、擦れ合う音が森の奥から響いて近付いてくる。それも凄い早さで。
ガササッ――
急に音が消えたかと思うと、狼に似た姿をした獣が6体、木の陰から飛び掛って来た。
4人はそれぞれ飛び退いて敵の攻撃を躱す。ラグスは着地と同時に武器を構え、1体の獣に斬りかかる。
「ギャンっ!」
首を見事に飛ばされた獣は声を上げ絶命する。すると体は黒い煙の様になり姿を消した。
「こいつら…魔獣か…!」
ラグスはその様子を見て舌打をする。今のは軽く倒せたが、魔力で作り出された物はどんな特殊な行動をとっても不思議ではない。なかなか面倒な相手と言えよう。
ラグスは剣を構えたまま、自分に向かって猛スピードで牙を向きながら突っ込んでくる魔獣に対し、剣を降ろし、手を前に突き出す。
「《焔は大蛇と成りて生け贄を求める》」
ラグスの呪文が響くと、突き出した指から高温の焔が噴き出し、火炎放射の様に噴出される。その焔は次第に大蛇の姿となり、魔獣を巨大な口で飲み込むとそのまま焼き殺してしまった。
「何よ…もぅ…」
文句を垂れると、チルデは向かってくる敵に鎌を構える。
「《我が舞は全てを輝きの世界へ導く》」
チルデは呪文を唱えると、飛び掛って来た魔獣にまるで舞うように鮮やかに鎌を振り、斬りつける。
しかし、魔獣は宙で体を捻り、致命傷を躱すとその勢いのまま突っ込んできた。
「終わったヤツには興味無いわ」
チルデはまだ向かってくる魔獣などに目もくれず、クルリと別の魔獣を見る。
すると、チルデが軽く斬りつけた魔獣は傷口から見事に氷だし、動きを失った体はゴロリと地に転がった。
その氷ついた魔獣に目を別の魔獣に向けたまま鎌を振り下ろすと、簡単に砕けちり、魔獣は姿を消す。チルデと睨み合いを続けていた別の魔獣は、それと同時にチルデに突っ込む。チルデは鎌を構え、大きく振り被ると、斬りつけられた魔獣はまた、切口から氷つき、地に伏した。
「弱っ…」
鎌を消し去ると、チルデは髪を払って一言、こう呟いた。
セルダは最初の一撃を躱すと、着地と同時に敵に突っ込む。トンファーで魔獣に殴り掛ると、魔獣は怯み、一回後退してセルダと間を置いた。
セルダはトンファーの先を地面に突き刺すと呪文を唱える。
「《腐界の地に、何人たりとも踏み入らせん》」
魔獣は少し前身を屈め、足を踏ん張るように力を入れる。そのまま後ろ足の力で高く飛ぶと、上からセルダに襲い掛って来た。
「境界…"コラプション ゾーン"」
セルダは魔法の名前を唱え、突き刺したトンファーの上を手で薙払う。すると、まるでトンファーを中心にセルダを守る壁が出来たかの様な状態になり、その壁に触れた魔獣は、みるみる体が腐敗し、完全に腐敗しきる前に煙となって姿を消した。
ユダは躱しながら、2丁の銃を魔獣に向け、銃弾を3発撃ち込んだ。
その弾を軽くジグザグに動くことによって魔獣は軽々と避けると、まだ着地体制が取れていないユダに向かって牙を向けて猛スピードで突進して来る。
「わわわっ…!」
ユダはそれに驚きながらなんとか着地すると、銃口を突進して来る魔獣に向けた。
「あ、《網の様に蔓延り全てを絡めとれ》」
ユダは呪文と共に左手に構えた銃の引金を引く。すると高圧な電流が、まるで網の様に銃口から繋がった状態で魔獣の体に打ち当たる。
「ギャイィィン」
高圧電流に魔獣が悲鳴を上げるが、暴れだす。だが暴れれば暴れるほど、電流の網は体にまとわりつき、容赦なく電流を長し続けた。ユダは右手に構えた獣で、暴れる魔獣の眉間を狙う。
パン――
的(まと)が動き回るにも関わらずに、それは性格に魔獣の眉間を貫いた。
体は煙の様に四散し、全ての魔獣を倒し終えた。
「これって…」
「悪魔の刺客…だろうな」
チルデの言葉を汲み取って、セルダが続きを言う。台詞を取られ、不服そうに頬を膨らましたチルデを見て、ユダは小さく笑みを作った。
「な、何笑ってんのよチキン野郎!!!」
「ひ、ひぃぃ〜!!!ごごご、ごめんなさい…!!!」
馬鹿にされたと思い、顔を少し赤らめながら怒鳴るチルデに、ユダは頭を蒲うように手を前に出して謝る。
「ユダ…情無いぞ…」
もっと頑張んないと…。
セルダはなんだか情無くて可愛いユダを密かに応援しながらその様子を見ていた。
「テメェラ!コントはいいからさっさと進むぞ!!!」
この光景をコントと言い一人でズカズカ森に入っていくラグス。
ラグスの声で争いを止めると、3人は小走りで後を追った。

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あきゅろす。
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