悪魔の真偽
空はこれから行く場所とは対照的に太陽が顔を出し、地上は明るい光に包まれていた。
「う〜ん…」
シルハは運送車から外に出ると同時に大きく伸びをする。マーダもシルハの真似をして大きく伸びをした。
「うわぁ〜…」
チルデは車から降りると、怪訝そうに顔をしかめながら目の前に広がる広大な森を見つめた。
全ての物の侵入を拒むように生い茂る木々。その木々は地面を明るく照らす太陽の光さえも立ち入りを拒絶していた。
「凄い木だな…」
更に車から降りてきたセルダが呟く。続いて気味悪そうに顔を青くさせたユダが降りてきた。
「おぉっし!全員集合!!」
ヴィクナは別の車から降りると直ぐに集合を掛ける。
まだ車から降りてない隊員達はお互いを押し退けながら我先にと車から降りるとヴィクナの前に整列をした。
「これから森の捜索を行う!散々になって森中をくまなく探してくれ!!ただし、何が起こるかわかったもんじゃないから単独行動は厳禁だ。必ず3、4人のチームを作って動いてくれ。じゃぁ捜索開始!」
ヴィクナの合図と共に側に居た仲間と適当にチームを組んで森に入っていく。
いつも通り、シルハはルイとレイチェル、そしてマーダと一緒にチームを組んだ。
「マーダ、約束して」
シルハは森にはいる前にしゃがんでマーダと視線を合わせる。
「なに?」
マーダは大きな瞳でシルハを見つめながら可愛らしく返事をした。
「この先、何があっても人を殺したら駄目だよ。わかった?」
シルハは真剣な面持ちでマーダに語り掛ける。マーダも真面目な顔をして大きく頷いた。
「わかった。約束する!」
シルハはその言葉ににっこりと笑顔をつくる。マーダの手を取ると、2人に出発の合図を出して、4人は森に入っていった。
「森に住む悪魔ねぇ…」
ヴィクナはボソリと呟く。悪魔など、本当にこの世に存在するのだろうか?
「ねぇレイア。この事件どう思う?」
ヴィクナは不意に隣に居たレイアに質問をした。
別段考える様子もなくレイアはその問いに即答する。
「私の考えでは魔法使いではないでしょうか?多分犯人は女…」
レイアの意見にだよねぇ〜と小さく呟きながらヴィクナは光さえも侵入を許さない暗く妖しい森を見つめた。
「この任務…多少面倒になるかもね」
ヴィクナは苦笑いをしながら森へと歩みを進めた。
森に入った途端、急に温度が下がる。少し寒気を覚えながらシルハ達は森を歩いていた。
「ま、迷いそう…」
鬱蒼と重った森の木々。方向感覚を狂わされ、任務が終わっても無事に外に脱出出来るかがシルハには心配で堪らなかった。
「また外の光が拝めますように…」
こんな暗いところで死にたくない…。必死な気持でシルハは手を前で合わせた。
「大丈夫だよシルハくん!その時は私が空からナビゲートしてあげる」
シルハはレイチェルの頼もしい救済にほっと一息ついた。帰りの心配はなくなったのでシルハは捜索に専念する。よくよく見るとホントに不気味な森だ。光が届かないから草はほとんどなく、辺りは苔や茸が支配をしている。足元は滑りやすく、戦いにはかなり不向きな環境だった。
「ねぇ、ホントにこの森に居るのは悪魔だと思う?」
レイチェルはこの暗い森とは不似合いな明るい声を出しながら3人…いや、シルハとルイの2人に問掛けた。
「悪魔は人間の心に住み着いた闇の具現化…。そう考えればこの森に居るのは悪魔だろうな」
ルイは森を見回しながらレイチェルの問いに答える。シルハはその返答にびっくりして目を丸くした。
「…なんだよ…」
そんなシルハと目が合って、ルイは怪訝そうに顔を歪めながらシルハに尋ねる。
「いや…ルイなら「悪魔なんてこの世にいねーよ」って一刀両断すると思ってた…」
意外〜と呟きながらシルハは面白そうに笑った。
「ルイはそう言うのは信じるの?」
現実主義者だと思ってたルイが意外にもそういう思考を持っていたことに多少驚く。ルイはまだ森を見回しながら答えた。
「空想と思われることも意外に現実にあったりする。悪魔だって実際どんな奴の心にだって潜んでるのさ」
「そっかぁ〜…」
ルイの話にうんうんと頷きながらレイチェルが反応した。マーダは3人の会話がわからずに不服そうな顔をする。だが直ぐに何かを捕えたのか、ピクリと反応した。
「どうしたの?マーダ…」
急に自分の手を握る力を強めたマーダにシルハは心配そうに尋ねる。マーダは正面を見つめながら答えた。
「前の方に魔力の臭いがする…」
シルハの手を更に強く握りながらマーダは小さく答えた。
「すっごく弱くなってるけど、空気中に魔力が散乱してるよ」
マーダの言ってる事が理解できずに3人は顔をしかめた。
「あ!」
そんな時、急にレイチェルが声を出してマーダの見る方を指差した。
「人が倒れてる!」
その言葉に驚いて、急いでその場所に駆けていく。すると苔の生えた地面にうつ伏せになって倒れている男を発見した。

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