森に住む悪魔
事の始まりはある果実から。

その森には特別な果実が成る木があった。その果実は甘く栄養価も高い。その為その森の側にある村"ルケーナ"の村人達は、その果実を重宝していた。
事件が起きたのはその果実を取りにある村娘が森に入った時である。
その娘は森に入ってから何週間しても帰って来なかった。心配した村の男が一人、はその娘を探しに森に入ったと言う。
しかしその男は数日した後、ただ一人で帰ってきた。それもガリガリに痩せ細り、衰弱しきっていたと言う。
その男は帰ってきてからというもの、うわ言の様にひたすら呟いていた。
「おぉ…麗しく…美しいイーディテルア……その姿を見せておくれ…」
「おぉ…イーディテルア…美しい…私の…イーディテルア…」
呟く度に飛び出すのは美しいイーディテルア。村の者は恐れ、森に悪魔が居ると囁いた。
そんな中、娘は一向に戻らず、男はずっと夢見がち。悪魔の正体を探るべく、数人の男が意を決して森に入った。
しかし、数週間男達は行方不明となる。
そんな中1人、また1人と森に入った男たちが帰ってきた。
その男達は皆前の男同様、痩せ細り、夢見がちに呟く。
「イーディテルア…何処にいるのだイーディテルア…」
村人達は更に恐れ、決して森に近付かなくなった。
だが、衰弱した男達は回復を果たすと毎日の様に悪魔"イーディテルア"を求めて森に入っていった。
行方不明になっては衰弱しきって帰還し、また森に入ってから衰弱しきっての帰還を繰り返す男達を見て村人は言った。
『男達は悪魔に魅入られ、娘は食糧として食べられたのだ』と。
「んでもって今回はこの"悪魔退治"が任務ね」
ヴィクナが任務内容を告げると、隊員達はざわついた。
「今時悪魔…?」
「迷信深い田舎村だからな…。実際悪魔なんていねぇよ…」
そう。この世界に悪魔なんて存在しない。いや、存在したとしても今まで拝んだ事の無い存在を、隊員達は素直に受け止められなかった。
「そう、どんなことも人間が絡んでる。この悪魔も森に住み着いた人間だろうね」
ヴィクナは隊員達のざわめきに反応しながら答える。
「もし、万が一本物だとしたらアタシらは人間の倒し方は知ってるが悪魔は専門外だ。その場合はさっさと退却するよぉ。とりあえず今回は事の真相の把握、人間絡みならそいつの討伐ってこと。何か質問は?」
ヴィクナはしばらく待つが誰一人反応しない。質問したいことは皆山々だが、実際現地で見るのが手っ取り早いと思ってるのだろう。
「OK!じゃぁ出発ね」
にっこり笑うと、ヴィクナはくるりと談話室をあとにする。ヴィクナの隊はタルットの隊より早く談話室を出て任務地に出発をした。

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あきゅろす。
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