パルス・ウルマーダ
それからパルスが到着したのは五分程後だった。
急に空間に亀裂が入り、闇の回廊が姿を表す。そこから薄い水色の長髪と瞳。白い肌と服を着た落ち着いた感じの男性が姿を現した。
「どうしたの?ケイル…」
その男、パルスは薄い笑みを浮かべながらケイルに問掛ける。それからマーダの姿をその薄水色の瞳に捕え、少し驚いた様な顔をしたが、直ぐに元の笑みに戻りケイルに更に尋ねた。
「誰?この子…。フォスターの子かな?」
ゆったりとした足取りでマーダの側まで寄る。そして視界にヴィクナとシルハも捕えると微笑んだ。
「おはようヴィクナ。それと…変わった子だね」
「おはよ!パルス。変わったってコイツの事?」
パルスの言葉にヴィクナは眉を潜めながらシルハを指差す。
「うん。この子も…その銀髪の子も…特殊な魔力を持ってるね」
そう言うと、パルスはマーダの座る椅子の高い背持たれに手を掛け、シルハを見た。
シルハはパルスと目が合いアタフタと視線を泳がせる。その様子を見て、パルスはクスリと笑った。
「緊張しないで。いじめたりはしないよ」
「は、はぁ…」
シルハは恐る恐るパルスを見つめた。
まるでそこだけが別空間。そうシルハは感じた。
パルスの周りだけ世界が違うように、優美でまったりとした雰囲気。不思議な人だなぁっとシルハは思った。
「その子も特殊なのか?」
ケイルはパルスに尋ねる。パルスはケイルの方をゆっくり見ると小さく頷いた。
「うん。なんか2人分の魔力があるみたい…とても似てるけど全然違う…。2種類の魔力が体を覆ってるみたいだよ」
不可思議だね。そう言うように笑みを絶やさずに興味ありげにシルハを見つめるパルス。シルハは訳が分からずに混乱した。
「…どういうこと?」
ヴィクナも良く分からなかったらしく首を傾げ、パルスに質問する。
「それはいずれ…。それより、用事は何かな?ケイル」
「あ、あぁ。この子の魔力の色を知りたくてな」
ケイルはそう言うと席を立ち、パルスに席を譲る。
パルスは椅子にゆっくり腰を掛けるとマーダをその薄水色の瞳でしっかり見つめた。
「変わってる…本当に…」
特殊な色にパルスは椅子を引いて更にマーダに近寄った。
「…この子の魔力は自分に魔力をそのまま纏わせる事で能力(ちから)を発動するみたいだね。普通の魔力と違って呪文による形の形成はいらないみたい」
パルスはマーダを見ながら感じたことを口にしていく。それを他の3人は聞き入り、マーダは訳が分からずキョロキョロと全員の顔を順番に見つめていた。
「魔力事態が既に決まった形のあるものみたいだね。それ以外の加工は出来ないみたい」
「…つまり?」
続いたパルスの台詞に疑問を持ち、ヴィクナは直ぐ様突っ込む。
「つまり1つの魔法しか発動出来ないって事だね。他の属性魔法や得意魔法を使えないって事だよ」
パルスはその疑問に即答する。次にシルハに疑問が湧き出た。
「えっと…その魔力は飛ばしたりして人に攻撃出来たりとかは出来るんですか?」
自分は未加工の魔力に苦しめられた。あれは何なのだろう。シルハは昨日のマーダとの戦闘を思いだしパルスに尋ねた。
「それは可能だろうね。ただ未加工の様に見えて既に加工された魔力だから威力は別の人が未加工で飛ばす魔力よりも高いと思うよ」
その問いにも即答する。その後、パルスはしばらく語るのを止め、マーダと静かに向き合った。
「…ちょっと魔法発動してくれる?」
「うん!」
パルスのお願いに快く答えると、マーダは一気に魔力の放出を始める。あまりの魔力の多さに空気が逃げるように辺りに散らばり風を巻き起こす。ケイルの机の上の資料は宙を舞い、窓はガタガタと激しく揺れた。
「おぉっ!!?」
あまりの魔力の大きさにヴィクナは驚き目を見張る。だが、パルスは冷静に醜く変わっていくマーダの姿を見つめた。
「ふぅ〜ん…面白いね…」
完全に変身したマーダを見て、パルスは相変わらず笑みを浮かべながら口の前に人指し指を当て、チョロリと舌を出した。

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