優しい朝
鶏が今日も朝来たコケコッコーと鳴かんばかりの快晴の空。例えが分かりずらいとか突っ込むのはとても厳禁だったりする。
そんな中で、シルハは体の疲れが抜けきらずに今だ眠い目を擦りながらマーダと一緒に談話室でヴィクナを待っていた。
「隊長…遅いなぁ……」
もう約束の時間は15分も過ぎている。しかし、ヴィクナが現れる様子は一向に無かった。
「シル兄〜。暇ぁ…」
痺を切らしたのか、此方も眠そうに欠伸をしながらシルハにしがみついていた。
「どうしたんだろうね。隊長…」
軽くマーダの頭を撫でながらシルハは時計を見た。一体今日だけで何回時計を見たことか。
はぁっと軽く溜め息をつくと、廊下からドタドタと駆け足の音が響いてきた。
「わ!悪い!!」
息荒に談話室に飛込んできたヴィクナはシルハの姿を見付けるなり腰をバッと折り曲げる。シルハは慌ててヴィクナに駆け寄った。
「た…隊長!!そんな…顔を上げて下さい!」
「いや…ホントゴメン…!寝坊しちゃって…」
てへへと舌を出し、頭をポリポリと掻きながらヴィクナは顔をゆっくりと上げる。その髪には寝癖がついており、慌ててきた事のだろうと思うとシルハは自然に笑みが溢れた。
「じゃ、行こうか!」
ヴィクナは元気に声を出すと、クルリと後ろを向いて談話室を出ていく。
「行くよマーダ」
「うん!」
シルハは手を差し延べ、マーダはしっかりその手を握るとヴィクナに付いて談話室を出た。
「マーダ、お前いくつ?」
後ろを振り向いてマーダを見ながらヴィクナは突然質問した。
「8歳だよ」
マーダはその問いに直ぐ様答える。ふぅ〜んと言いながらヴィクナは正面に向き直ると、歩きながら何かを考えるように空を見上げた。
「もしかしたら…フォスターに入れられるかもね」
「フォ…フォスター?」
いきなりヴィクナの口から飛び出した聞き慣れない単語にシルハは首を傾げる。
「そう。幼児軍事施設…傭兵育成施設ね。ファンタズマにはそういう場所があってさ。子供はそこで戦闘訓練をするの」
歩きながら言うヴィクナの後ろ姿を見つめながらシルハは微妙な心境に陥った。
「こ…子供の頃からこんな処に居る人も居るんですか!?」
「そうだよ。家の事情や孤(みなしご)なんかはこの施設…アタシ達はフォスターって言ってんだけど、とりあえずそこに入れられて餓鬼の頃から訓練されるの」
だいたいゲルゼールやウィクレッタの奴はここ出身。
続くヴィクナの台詞にシルハは驚愕した。
と言うことはだ。ゲルゼールやウィクレッタになる人間と言うのは子供の頃からその技術を研かれた人間と言うことになる。
こりゃ相当の努力が必要だなぁ…。
シルハはそう思い軽く苦笑いした。
そんなこんなでいつの間にかケイルの部屋に着いた。
コンコン――
ヴィクナのノックと共に、扉は乾いた音を立てる。それを聞いて直ぐに返事が帰ってきた。
「どうぞ」
ケイルの優しい声だ。これを聞いただけで自分の心音が高まるのを感じ、シルハは自分の中でのケイルの存在の大きさを再確認する。
「入るよ〜ん」
ヴィクナはドアを開け、部屋に入る。それに続くとシルハは机に座るケイルの顔を見て、更に心臓が暴れだして少し苦しくなった。
「おはようみんな」
ケイルは机から立ち上がり、此方に歩いてくると優しい笑顔を溢し、軽く挨拶した。
「おっはぁ。昨日言ったのコイツだよ」
ヴィクナも挨拶をすると、直ぐにマーダの手を引いてケイルの前に出した。
ケイルと目が合うと、マーダの体がビクリと震える。
「大丈夫だよ。リラックスして」
ケイルは笑みを溢し、マーダの頭をクシャリと撫でた。
「さてと…」
ケイルはその後に机に向かって歩き、資料を数枚取り出す。
「悪いけど…色々調べさせてもらうね」
更に椅子を机の前に引っ張って来ると、マーダをそこに座らせた。

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あきゅろす。
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