ゆったりとした夜
空に優しく瞬く星に迎えられ、本部に帰還したシルハ達はそれぞれの部屋に戻り休息を取っていた。
「ねぇシル兄〜?」
「ん?何?」
マーダの問掛けにシルハは眠い目を擦りながら答える。逆にまだ爛々と目を輝かせてマーダはシルハにオネダリを開始した。
「遊んで♪」
「えっ!?」
マジですか?と一瞬ドキリとする。シルハは疲れきって一刻も早く柔かい布団に潜り込んで眠りに堕ちたいからだ。すでにルイは気持よさそうに夢の世界へと旅立っている。
だが、マーダの事を考えると断るに断れなかった。
「うん、いいよ。何して遊ぶ?」
「んとねぇ…隠れんぼっていうのやってみたいなぁ」
マーダは嬉しそうににっこりと歯を見せて笑いながらシルハの腕にしがみついた。
「いいけど…ルール知ってる?」
「ルール知らない♪♪」
きゃっきゃっと笑顔でマーダは答える。シルハはその愛らしい子供らしい笑顔に安心した。この子はもう心を取り戻したのだと。
「じゃぁルールを教えるね。まず…」
コンコン――
「シルハ、起きてる?」
シルハの声と被ってドアをノックする音、そして続いてヴィクナの囁くような細い声が聞こえた。
「は、はい!」
シルハは急いでドアを開ける。するとヴィクナがドアの前に遠慮しがちにチョコンと立っていた。
「悪いね、疲れてる処に…」
ヴィクナも眠いのだろうか、赤くなった目を擦りながらシルハに謝った。
「いえ、大丈夫です。…どうしました?」
シルハも欠伸を噛み殺しながらヴィクナに尋ねた。
「うん…明日の朝6時30分にマーダを連れて談話室に来てくれる…?そしたら――」
ここでヴィクナは大きな欠伸をして言葉を切った。シルハもつられて欠伸が出そうになるのを必死に堪える。欠伸を終えると、瞳から溢れた涙を拭いながらヴィクナは続きの台詞を述べた。
「――一緒にケイルのとこ行くよ。わかった?」
「はい…、わかりました」
「じゃ、もう寝ろよ。おやすみ」
「おやすみなさい」
ヴィクナはクルリと後ろを向いて伸びをしながら廊下を歩いていく。シルハは少しその様子を見守ると静かにドアを閉めた。
「マーダ…明日早く起きなきゃ行けなくなったからもう寝よう」
「え〜〜!!」
シルハは後ろを振り向くと、早く遊びたくて仕方ないと言うように目を輝かせたマーダに言った。もちろんマーダからは抗議の声が上がる。
「マーダ。明日は早く起きて、ここで一番偉い人に挨拶に行くんだ。もし寝坊なんてしたら追い出されちゃうかもよ?」
「そしたらシル兄と一緒に居れない?」
マーダは一気に顔の表情が曇る。シルハは一瞬しまった!と思ったが、まぁこれで寝てくれるかな?と思い言葉を続けた。
「うん。だから寝坊したら大変。早く寝よう?」
「うん!」
マーダは元気良く頷くとシルハの布団に潜り込む。シルハも電気を消してから自分の布団に入った。
マーダは、元気一杯だと思ったが、アレは興奮の為で、寝っ転がった途端に疲れが来たのか直ぐに眠りに堕ちた。
それを確認すると、シルハも瞼を閉じる。
完全な静寂の中、夢の中へと堕ちていった。

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