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missing!
いい加減に授業しろや!
間違えてねぇ!現実逃避しないでください


ピシャリと扉が閉まり、教室内でクラスメートが吹き出している声がきこえた。

すると廊下からも担任の話し声が聞こえた。


「どうなさったんですか斎藤先生」
あれーこの声聞き覚えがあるぞー
つーか担任の名字斎藤っていうんだな。

「おう。米澤。あいかわらず黒いオーラ満開だな。」

どんな挨拶ですか担任よ。
つかやっぱり話し相手米澤なんだな。

「A組に用があるんですけど。うちのクラスにいるはずの少女マンガオタクとクソ犬がにげだしやがりまして。何故か僕が捕まえに行かなければならなくなったもので。」

こっえぇええ!クソ犬って千秋のことだよな!
言ってることとは裏腹にとても淡々とあのいつもの笑顔で黒オーラの時の声で話している。

真琴と千秋の顔が真っ青である。

あっこいつら殺られるな

「あぁそうか。先生としてもクソ犬はぜひとももってかえってほしいんだけどな。残念ながらA組がみあたらないんだ。先生も早くホームルームを始めなきゃいけないんだけどな。あー残念だなー見つからないんじゃしょーがないよなー帰るか。」


いやダメだろ!


「何いってるんですか。目の前にA組あるじゃないですか。入りますよ。」


「俺には見えない何も見えない」
斎藤がなにやらブツブツ呟いていたが米澤は軽く無視して扉を開ける。

ガラッ


2-Aの扉が勢い良く開き、米澤が入ってきた。

教室にいた人たちは身動きせず静かに廊下の担任と米澤の会話をきいていたわけで。
つまり教室の中の状況は先程担任が入ってきた時となんらかわりはない。

そう、米澤の目には机がひっくり返って散乱している荒れ果てた教室が入ってきているはずだ。

何を言われることか!と誰もが身構えたがしかし。

米澤の目は真っ直ぐに千秋の方に向けられていた。

後ろに大きなブルドーザーをたずさえて。

「おはようございます千秋。朝早くから愛しい人と逢引きなんて好いご身分ですね忘れましたか今朝は朝早くから風紀委員会室に来るように言われてましたよね私があなたの分まで委員長様様様様にいびられなぶられ扱き使われ続けたんですよその間女子のところへフラフラと?ふざけないで下さい暫くA組入室禁止です仕事が終わるまで休み時間と放課後は風紀委員会室に強制送還ですから委員長もご立腹でしたよざまぁ」

アレ最後の誰言った?米澤?キャラ崩壊してるから!


息を継ぐ暇もなく一息でここまで言えた米澤を尊敬する。
相当頭に来てたんだな。


振り返って千秋の方を見ると真っ青で更にガタガタ震えている。

きっと『委員長もご立腹でしたよ』にやられたんだろう。
委員長…一番怖いんじゃないか。
教室中が米澤の吹雪と委員長への恐怖と千秋への同情に静まりかえっていると
米澤の後ろから担任が出てきてのんびりした声で言った。

「何があったかどーでもい…いや知らないが、あと3分以内に教室片付けないと係決め先生の独断と偏見で決めることになるな。」

なんて殴り飛ばしたくなる笑顔でしょう!

きっと教室中の生徒達の心は一つになっていたに違いない。


しかし、皆係決めを勝手にされるのは嫌なため、ガタガタと慌てて片付けだした。

米澤は隙ができたとばかりに真琴と千秋に帰ろうと呼び掛けるが、「風紀がそんなに無責任で無情な委員だったとはなーあぁ先生は残念だなぁ本当はしたくないけど委員長に報告…「手伝いますよ!」はっはっはっは。正義は勝つ!」
誰が正義だ!と突っ込みたくなるようなやりとりのおかげで、あらかた片付けてから帰っていった。

瑞稀は片付けている人に次々と謝って片付けて謝って片付けて亜稀を殴って叱り付けて謝らせて片付けて…を繰り返し、ようやく3分前に教室が片付いた。

片付けている間に沢山の人と話せたし、まぁコレはコレでいいか。と瑞稀は割と楽しんでいたが、皆着席して朝から疲れた様子を見ると、何だかもうしわけない気分になった。

亜稀の方はもう周りの女子といつの間にか仲良くなっていて、亜稀と前後の席だというのに皆亜稀の方ばかりに目が行ってよろしくねと手を振っていた。

うん。気持ちはね?気持ちは解るけどね?亜稀と前後のあたしとか存在薄れちゃうけどね?
ならんでたらついつい亜稀の方見ちゃう気持ちは解るけどね?

切なすぎるじゃねーかぁぁあ!

軽くセンチメンタルなきもちになって隣をみると見知らぬ男子が座ってたはずの席に


「やっほー瑞稀。」

何故か理沙さんが座ってこちらに手を振っている。

「あ…あぁやっほーって…え?」
「あっははこの席にいた猿?あいつに退いてって行ったらすぐ退いてくれたよ優しいね!亜稀と瑞稀前後なのにあたしだけ離れてるなんて嫌じゃん。」

あー。そうゆうかんじですか。てかいいのか?そんな軽いかんじで席変えちゃっていいのか?

男子を猿呼ばわりする理沙の新しい一面をみた気がしたが、周りが知らない人ばかりの中、知ってる人が近くにいるのは何とも心強い。
何より、理沙がわざわざ隣にきてくれたことがすごくうれしくて

もしかしたらあたしが亜稀のオーラに押されかけたのにみかねたのか、そうでなかったのかは分からないけど。

それでも助かったことにはかわりないから


「ありがと。」


そう言ったはいいけど照れやらなんやらで目が泳ぐ。
なんか暑くなってきたし!

泳がせた目を理沙の方へ向けると
キラキラした目で理沙はこっちをみてきた

「んもー!瑞稀め!瑞稀のくせにコノヤロウ!」

なんかわからんが頭をわしゃわしゃされた。
突然過ぎてビビるわ!

「なっ理沙いきなりなんだよ!」
「やー!瑞稀と亜稀全然似てなくて無愛想だと思ったら!構ってやりたくなるとことか凄い似てるじゃん!さっすが亜稀の妹!」


そういわれて


急に熱が冷めた気がした。

それがばれてしまわないように
いつもの掛け合いを続ける瑞稀。

「誰が無愛想だ失礼な!こんな愛嬌ある顔を目の前にして!」

「あっははなにその冗談ウケる!」

「ひどくね!?」




亜稀が嫌いなわけじゃ決してないけど


昔から

亜稀と比べられるのは凄く――――











「おー3分以内におわったみたいだな。よし、今からホームルーム始めるぞ。自己紹介は都合上カットな」

いつの間にか教壇に上がっていた担任がざわざわしていた教室を仕切りに入った。

都合上って担任がめんどくさがっただけだろ。


「俺がこのクラスの担任になったからにはいいか!?
俺の前でいちゃつくの禁止な。
バカップルの浮かれポンチには制裁をくだす。
喜べ!モテない男子ども!これで不憫な思いせずにすむぞ。」

はっはっはと快活に笑う担任にクラス中(特にもてない男子)が『殺』のオーラをただよわせた。

周りからは
「自分がモテないからって!」
「自分がダサ眼鏡だからって!」
とかいう女子の担任への悪口だとか
「おれらの立場ねーじゃん」
「出来ないんじゃなくて、つくらないんだ!」
「皆俺の魅力に気付いてないだけさ。別に!好きな子にだけ気付いてもらえればそれでいいしな!」

とかいうモテない男たちの悲しい言い訳なんかも聞こえはじめたそんなとき


「せんせー」
タルッそーなでも何処かしら嬉しそうな声が聞えた。

教室を見回すと1人の少年が手を挙げている。チャラそうな茶髪少年。だけどなんだか子供っぽい表情をしている。台詞を付けるとしたら『いーもんみっけた♪』といったところか。

それを目にした担任は
「まぁた宮本俺のクラスか。何だ。」
とため息を吐く。

どうやら挙手した生徒は宮本と言うらしい。

椅子に座ったままふんぞり返っているが、なんだか憎めない感じだ。
「せんせーがもし俺たちの前でなっちゃんせんせーにピンクオーラ発してたらだめってことですよね?」

すると担任はあからさまに動揺した。

「は?いいい意味分からないなー先生にはさっぱりだな。なんで葛原菜々子先生が出てくるんだろうなー。」

すると茶髪の宮本くんは隣の席の桐生の肩を叩きながら話す。

「へっへっへー!こっちにはブツがあがってんですよー?なぁ桐y「情報料くれたら」…そっそれにですね、もし先生がしらばっくれても俺の前でピンクオーラだしたりすれば俺たちなりの制裁を考えてもいいってことっすよね?
先生の恥ずかしいあーんなことやこーんなことをバラしちゃったりして!丁度情報を提供してくれる桐生もいることだ「諭吉1人でいいよ」…ちょっと!」

必死に先生に訴える宮本にちょいちょい水を差す桐生に宮本が切れた。

「俺俺たちの青春のために戦ってんじゃん!このクラスでいちゃつくなってのを撤回させなきゃだろ!ちょっとは協力してよ!桐生ー!」

「興味ないし。」

「ひどっお前は興味ないかもしれないけど俺たち友達じゃん!?友達割引お願いします!」


「残念ながら当社にはそのようなサービスは行われていません。」
「そんな…!酷いわ…!私のハートはブロークン…」

テンパ桐生の棒読みの返しに、乙女の泣き真似をする宮本。

呆れた担任がトドメを刺した。

「宮本、俺が『俺の前でいちゃつき禁止』してもしなくてもお前のモテなさは変わらないぞ。」


「ΝΟΟΟΟΟΟΟΟ!!」

「先生。事実を言ったら可哀相ですよ。」

「いや。現実と向き合わなければならないときもあるんだ。」

「俺泣いていい?ねぇ泣いていい?」


なかなかA組の1限目は始まらない。








一方こちらB組


「よろしくっす千秋くん」

「あぁ」

遅れてきた2人はB組担任通称なっちゃんにこってり絞られ、空いた後ろの隣り合った2席に座ることになった。

「なっちゃんギャップ激しいっすよねー。凄い優しげな美人さんなのに口すごいっすからねー」

「あの鬼ババマジありえねぇし。斎藤には猫かぶってるけどな。キメェ」

スコーン

顔だけ真琴の方へ向けていた千秋の目の前をチョークが飛んでいった。
頭を慌てて正面を見るとなっちゃん先生いわゆる葛原菜々子先生が。

「あぁらごめんなさい♪手が滑っちゃって♪…話してねぇであたしの話聞けやボケェ」


最後はドスの効いた声で美人な顔が台無しである。

「すっすみません」

真琴はすぐさま謝ったが、千秋はちっと舌打ちした。

なっちゃん先生は不満たらたらの様子だったが、再び話を開始した。

「まぁー、なっちゃんも恋する乙女っすからねえ」

こりもせずに正面をむいて話を聞いているふりをしながら話をつづけた。

「それにしてもなーんでなっちゃんみたいな素敵な人が斎藤なんかのこと好きなんすかねぇ。見る目ないっすよ!他人の青春を俺の前でやるな!なんていいまわってる奴。」

「まぁな。斎藤もババァの前では紳士ぶってるからな。」

「いっそ分かりやすいっすよね。でもまぁ私は全ての恋する人のみかたっすからね。二人を応援するっす。
というわけで千秋くん!」


「あ?」

「少女マンガを熟知した私が!千秋くんの恋のお手伝いっす!」

「ほっほんとか!?」

急に目を輝かせた千秋。
ワンコモード全開だ。

「題して、『傘と捨て犬と不良少年〜へへっくすぐったいだろ〜大作戦!』」

真琴がそうさけんだとたん、二本のチョークがそれぞれ千秋と真琴のおでこにあたり、なっちゃんの怒鳴り声が響き渡った。



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あきゅろす。
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