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missing!
そして長い一日が終わる
「…稀……だよ!!」

「…稀は…………、…?」


誰かが言い争っている声がしている。

ゆっくりと意識が浮上してくるのがわかる。

うっすらと目を開くと真っ白な天井が見え、背中にやわらかい感触。

むっくり上半身だけ起き上がった瑞稀は覚醒しない頭でぼんやり周りを見渡す。

どうやら瑞稀は柔らかいじゅうたんの上に寝ていたらしい。

瑞稀から少しだけ離れたところにちゃぶ台よりは断然質のいいものだがちゃぶ台くらいの高さの机があり、その両脇にはでっかいふかふかしてそうな高そうなソファーが。


寝起きの瑞稀は頭の回転がすこぶる遅い。

事態の異常さには全く気付いていないようだ。





なんだかソファーのまわりに人がたくさんいるなー。


ぼんやりとソファーの辺りを眺めていると


徐々に起動しはじめた頭に響く言い争う声

「てめぇ!何ちゃっかり亜稀の隣に座ってんだよ!」

片方のソファーの前に立ってソファーに女の子と座っている男に食ってかかっている少年1人。

「亜稀は俺の隣と決まってるんだ。諦めるんだな。」

女の子の肩を掴み自分の方に寄せ、ふん、と自信満々に言い放つ男1人。

「亜稀ちゃん、俺ともしゃべろー!」

向かい側にあるもう一方のソファーから女の子に笑顔で話し掛ける男1人。


あー千秋とせいとかいちょーが喧嘩してるや。



ん?



千秋とせいとかいちょー。



えーと



瑞稀の脳内で血液が光の速度で駆け巡った。

頭フル強制起動


ピッコピッコピーン。

瑞稀の頭はクリアになった。


「なんで千秋とせいとかいちょーがいんだよ!?」


そう叫んで飛び立ち上がった時、完全に目覚めた瑞稀の目に入った光景は

片方のソファーにふんぞり返って亜稀の肩を抱いている生徒会長

生徒会長に肩を抱かれて「やー、ちょっと先輩やめてくださいよー。肩が重いです。」と生徒会長からのがれようとする亜稀。

語尾がのびてるからテンション低めの亜稀だな。

机の横に立ち、ソファーにいる生徒会長に食って掛かる千秋。

それを止めている米澤。

千秋と会長が喧嘩してる隙に亜稀に話し掛けている生徒会会計の桐生。

きゃー生ハーレムっスよ!とテンションMAXではしゃぎまわる真琴。

真琴に一々突っ込みを入れる凛。


それらが一斉にこちらを振り向いた。

うお!?ちょっとびびるじゃねぇか。


つーかなんで皆集合してんだよ!

てかソファーあるならあたしをねかせろよ!一応病人(?)だろ!
じゅうたんの上だとしても床って!しかもめっちゃ放置!

やっぱりあたしの扱いぞんざいだな!あたしなんかしましたか!?

あーその米澤の哀れみを込めた眼やめて!せつなくなるから!



「え!?皆居るし!ここどこだよ!?」

未だ状況が理解できていない瑞稀に凛が答えた。

「あー。ここは生徒会室だよ。」


瑞稀は改めて部屋を見渡す。

部屋の広さは風紀委員会とさほど変わらない。
違うところといったら部屋の奥にまた扉があるというところだろうか。

風紀委員会室と同様に瑞稀が誰かの家?と思うほど家具が統一されていて窓もでかくて明るい。

生徒会役員の趣味が異なるのか、結構ごちゃごちゃしていた。


床はフローリングだがソファーや机が置いてあるところにはふかふかのじゅうたんがしかれている。
部屋の右半分はソファーや机で埋まっているが、左半分は作業用のデスクと椅子が人数分あって、最新な感じのパソコンが一台あった。
でかいコピー機が一つあり、でかい棚には隙間なくファイルやノート、資料らしきものが敷き詰められている。

中学のときとはずいぶんと違うな。
さすが私立!

部屋の立派さに瑞稀が感動していると、凛の申し訳なさそうな声が聞こえた。

「瑞稀、ごめんな。いきなりで驚いただろ。
瑞稀が倒れてからどうしようかと迷って会長に連絡したら『連れてこい』ていわれたからさ。」


思い出した。あたし逃げてたら亜稀に捕まって首の後ろに衝撃がきて倒れたんだっけ。
今考えたら犯人は亜稀だな。

姉に襲われる妹ってどうよ。

それにしてもなんて副会長いい人なんだ…!!

副会長さんが謝る必要なんか無いのに!
というより原因は亜稀と生徒会長だろ!あいつらこそ謝れっつの!
つーか『連れてこい』って言われて連れてきたってことは副会長さんが連れてきたって事か!?

なんてこったい!


軽くパニックになっている瑞稀に桐生はありえないことを言い出した。


「それより生徒会に入る気になった?」





なんで?


今までの話の流れでなぜそうなる!?

今までの生徒会の皆様のあたしへの扱いの酷さみましたよね!?

入りたくなる要素なんて一つもなかったんだけどな!

寧ろ入らないっていう意志がより強くなっただけだな!

この流れで入りたくなったらマゾだろ!あたしはマゾじゃないんだっつの!


もともと生徒会には入りたくなかったんだ。


あたしは亜稀を生徒会に入れたいが為だけに勧誘されているのだ。

つまり、亜稀が生徒会に入ってしまえばあたしは用なし。

自分の力が認められたから勧誘されるのなら生徒会をこんなに頑なに拒むことはしなかっただろう。

でも今は

皆あたしを勧誘しているのにあたしを見ている人はいないんだ。

亜稀のおまけとか寧ろ邪魔とかおもってるかもしれない。

こんな状況で生徒会にはいったってなれないキラキラしたオーラに馴染めなくて
いづらくなるだけなんだ。

そう思うと何だか悔しくて。

そんなことがわかってしまう自分が嫌で

そんなことを思ってしまう自分も嫌で

そんな事を考えてるなんて思われたくなくて

口に出したくはないんだけど。


「瑞稀、また変なこと考えてるでしょ」


なんで亜稀はわかっちゃうんだよ。




「……なんで…」

あたしから離れたところにいる亜稀が小さすぎる声で何かを言った。

小さすぎて聞き取れなかったから聞き返そうとした瑞稀の言葉は
外に出ることなく引っ込んだ。

亜稀が今までに見たことが無いくらいの悲しそうな顔をしていたからだ。


だからあたしはいつもどおりのテンションで言った。

「どー考えたらそーなる!?この流れで入りたくなったらマゾだろ!あたしはマゾじゃないんだっつの!」

今更ながら桐生にツッコミをいれた。

だって亜稀のあんな顔みたくないだろ。

亜稀は誰よりも他人の感情に敏感だから。

いやいやもちろん亜稀にあんな顔させたらあたしが他の何処かの誰かさんに殺されるからだからなうん。


「え。マゾじゃなかったの?」

にこにこしながら桐生が言った。
「ありえねぇよ!」

おまえは口を開くな。



「まぁお前に拒否権はねぇがな。もう生徒会にはいっている。」

突然生徒会長が話に入ってきた。
「はぁ!?」

あたしのいない間になにが!

てか
「そういうのって本人の了承いるもんじゃねーの!?」


「俺の父親に頼めばなんてことはねぇよ」

そういやこいつの父親理事長だったか。

こんなときに権力を使いやがって!あたし勝てるわけないだろ!


「や、あたし生徒会の仕事なんて無理ですから!企画したり司会したり挨拶したり指示したりなんてできませんよ!それに正直めんどくさ…いやゲフンゲフン。」

あぶねー。


「お前にそんなもの期待してねぇ。」
バッサリと生徒会長蓮夜は言い放った。

「失礼だな!」

じゃーあたしする事ないのか!それは楽でいいけどな!

「お前は雑用係だ」

「はぁああ!」

そんな係ありかよ。超めんどくさそうじゃん。

絶対扱き使われそう。主に会長とか会長とか会長とかあと桐生!

あたしが厳しい現実と憂鬱な未来に絶望していると明るい声が近づいてきた。

「やったスね!これからよろしくッス!!」

真琴である。

え、ごめん何もやってない。てか嬉しくない。

凛もあたしの方に近づいてきた。

「…言っとくけど、生徒会はいくら亜稀を入れたいからっていっても気に入らない奴は入れないから。
瑞稀は皆に結構気に入られてるんだよ?勿論私も瑞稀が入ってくれてうれしいよ」

気に入られてるって…全然愛を感じないんだけどな。

多分副会長があたしに気を遣ってそんな事いってくれたんだろうな。
本当副会長優しいな。

てかあたしが考えてたこと何でわかったんだろ。

「え。そんなにあたし分かりやすかった?」

ぽろり。と思ったことが口にでた。あぁああいつもこんな感じで思ったことを無意識に口に出してたんだな!無意識って怖い!

「分かりやすかったっていうか…今までの私達の態度からしてそう思われてても仕方ないと思って。



気分悪くさせてごめんな。」

あぁ…なんて優しいんだろうか副会長さん!

あたしが副会長凛の優しさに感動していると、突然肩に手を置かれた。

振り向けば亜稀の整った顔。

「絶対…楽しくなるよ、瑞稀!」

そういった亜稀の表情はいつものエンジェルスマイルに戻っていて、少し安心した。





生徒会長は亜稀がさっき悲しい顔をしていたのに気付いていたのか、
亜稀の笑顔を見てほっとした表情を見せた。

そして瑞稀の方を向いて一言。









「雑用係。コーヒー。」





てめぇは空気読めやぁぁああ!






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