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missing!
いいんちょぉおう!




え。ちょ。何?!意味分かんねぇよ!


2つの笑い声の中にもうあの冷たい声は無くて。


さっきまで怯えていた鋭い冷たい視線やオーラなんかはもうなくて。


急展開急展開!ガガガガガピーヒョロロー

瑞稀の脳は現状についていくことを諦めた。


頭はもう起動していなくて、ポッケラカーンとしていた瑞稀に

風紀委員長様様様(以下略)が近づいてきた。

というより、土下座中の瑞稀の前に立っていた委員長が目線を合わせるために膝を着いただけなのだが。


彼の顔にはもう冷たいものなどなくて、むしろ温かな優しい表情だった。


しかしさっきの委員長オーラが軽くトラウマになっていた瑞稀はびっくりして身体を後ろに引いてしまった。

瑞稀もちょっとこれは失礼だったかなと思って、

「すみません」

ボソリと謝った。

すると委員長は少し困った顔をして安心させるように笑い、

瑞稀の頭をポンポンっと軽くたたいた。

「ちょっとからかい過ぎた。ごめんな。俺、ちゃんとわかってるから。」


その手が
その声が
その表情が

あまりにも優しくて


緊張で強ばっていた全身の力が抜けていくのを感じた。


「別に」


熱くなる頬を隠したくてそっぽを向いた。

全く。こういう風に優しくされるのは慣れてない。


耐性が無いんだよコンチクショー!

つーか他人にそんなことされたら誰だって恥ずかしいだろ!

天然のたらしですかあんたは!!

てかいつも皆のあたしへの扱いが酷いからあたしにこういう耐性がつかないんじゃねーか!!

何かしらんが腹立ってきた!!


「おー。元気良いな。」

委員長がやわらか笑顔で言う。

「えぇ!?まさかまた口に出てた!?」

もうほんとどんだけ学習能力無いんだよあたしは!

「…無自覚?それってヤバくない?軽くやばくなくなくない?」

え?誰の発言?

とまわりを見渡すと声の主は無表情でパソコンをいじくっていた。

「あーっもうさっきからおまえ何!?そんなに人を怒らせたいか!つか表情とセリフが一致してねぇよ!」

「俺、おちゃめなお年頃だからー」

「キメーよ!」

無表情でおちゃめ言うな!
せめてテヘっみたいな顔しろよ!

まぁお前がそんな顔してもびっくりだけどな!

「なーんか楽しそうだな。」

委員長がクスクス笑う。
そこにはさっきの大人っぽいオーラは漂ってなくて、年相応の無邪気でたのしそうな笑顔。

不覚にも瑞稀はドキッとさせられた。

「あーっもーイケメンは勝手に笑うな!!心臓に悪いわ!」

なんだよ!?ギャップか?!ギャップ萌を狙ってんのかぁああ!



「ははっいきなり何いってんだよ?!」

はははっと笑っている委員長殿。

え、こりゃーもしかして…


「あー先輩に何言っても無理無理無理。無自覚さんだから。」

パソコンいじってる王子くんUがこれまた無表情で言った。


やっぱりかぁぁああ!


無自覚とか亜稀の男バージョンが!!

…きっと周りの人は苦労してるんだろうな…

瑞稀はパソコンをいじくっている少年に少し同情して目を向けると、やる気の無い無表情で

「そーんなに見つめないでー。てーれちゃうわー。」

棒読みで返された。



うん。こいつも普通じゃなかったや☆



「んじゃぁープリンを食べるという罪深い行為をした君に罰則を与えようかな。」

委員長こころなしかうれしそうなんですが!!

てか

「えええ!?さっき『俺、ちゃんとわかってるから。』て言ったじゃないですか!!」

あれは真犯人があたしじゃないってしってるぜ?てことじゃねーんですかよ!!?


「え?何のことかさっぱりだな。」

「まじか!まさかの記憶喪失!」
もしかしてこの人黒い!?…ま、まさかね。記憶を失ってるだけだよな!この短時間に!!


「でもなぁ…ははっあの智尋と千秋のビビりっぷりさみてておもしろかったな。」

普段の大人びた顔ではなく

ははっと無邪気にいたずらっ子のように笑う彼はもうギャップ萌の塊。

しかし!言ってることは無邪気の遥か彼方に位置する黒いことをいってるじゃあーりませんか!

言ってることと表情でもギャップ萌狙ってんのかぁああ!

だんだん瑞稀が頭のなかを整理出来ずに自分でも何考えてるのか分からなくなってきたとき、委員長様は話を進めてくださった。


「罰則を与えようかなと思ったけど君は編入したばかりで今日することがたくさんあるんだろ?今日は帰っていいよ。…水嶋瑞稀さん。」

そのときのあたしはもうなぜにあたしの名前を知ってて編入生であることを知っていたのかに突っ込む余裕なんてなくて、


「まじですかぁぁあ!?」

やっとここから解放されるぜヒャッホオオウ!という気持ちをこめた歓喜の雄叫びをあげた。


「まぁ…君が君が帰りたくないって言っても帰らせるけど。」

王子くんUの冷たい声。

それにも気付かないほど瑞稀のテンションはあがっていた!!


「まさかまさか!?喜んで帰りますよ!こんな魔王の巣みたいなとこってギャー嘘です嘘です若気の至りですさようなら!!」


バタン


「…嵐がさったな」


誰かがぼそりといった。






Side???


水嶋瑞稀とやらの女が去って、風紀委員会の室は静けさを取り戻した。

…うん。やっぱりこっちのが落ち着く。


ドサッ

先輩がソファーに再び座って資料を読み始めた。

そういえばあの女がきてから仕事が止まってたじゃないか。

さっさとあの女帰せばよかった。
先輩が食い付かなければさっさとかえしたのに。

そういえば

「先輩も人が悪いね。あの子は関係ないって分かってたんでしょ。」

俺にもバレバレだったけど。


すると風紀委員長である先輩は、
「お前に言われたくないな。今の間にも彼女のデータ調べてるんだろ?」

穏やかな大人びた声。

やっぱりばれてたのか。

「まぁ…そうだけど。てかバカだよねあの人等。扉の前であんだけ大声で騒いでたら全部筒抜けにきまってるじゃん。」

言ってる間もパチパチとパソコンをいじる手は止めない。

「あの二人に付き合って罪をかぶるなんてな。弱みでも握られたな。」


「まぁお人好しなのか只のバカなのかそれとも…タダの男好きか。
先輩はどうおもいます?」



「さあな。」

先輩は窓を通して遠くをみるようにして言った。

こういうときの先輩は何考えてるのかわからない。

ふと、さっきから思っていた疑問をぶつけてみた。

「先輩、彼女を委員会に入れるつもりなの?」

「いやいや、今日あったばかっかりだろ。なんでだ?」

先輩はあり得ないだろ。というようすで驚いた顔をしている。



「…先輩が楽しそうだったから。」

パタリとパソコンをいじくっていた手を止めて、ぼそりと言った王子くんU。


まさか。と思ったんだよね。


「俺はいつでも楽しそうだけどな。…まぁ確かに面白そうな子だけどこの学校に入ったばかりの編入生を風紀委員会にいれるほど非常識じゃないからな。」

はははと笑っている先輩にちょっと安心。

裏を返せば、生徒会が非常識っていってるようなもんだけどね。

入学式の騒動は酷かった。

俺も、先輩も入学式に参加していたから知っているはずだけど。


「まぁ、ただの男好きだったら全力で風紀委員会に入れるなんて拒否だから。風紀を乱す原因になるだけだし。
それにもう先輩に落ちちゃったんじゃないの?」

どちみち風紀委員会に入れるつもりないんなら関係ない話かもしれないけど。

何となく。

「俺に惚れるわけないだろ。まだ会って少ししか経ってないんだからな。」



…先輩はもうちょっと自分を知ったほうがいいと思う。

て言ってもわからないんだろうけど。

「まぁ…。彼女はそんなに悪い奴ではないと思うけどな。俺は後輩を信頼してるから。」




意味分からない

そんな気持ちが顔に出てたんだろうか、先輩は困った顔をして言った。

「智尋と千秋はただの男好きなんかを風紀委員会室に連れてくる奴らだとは思ってないし、それ以上に人を見る目は備わってると思っているからな。」

先輩の眼からは確かな信頼が伺える。

「…ふーん。」

俺は無表情のまま再びパソコンをいじり始めた。

それに何を思ったのか、

先輩は俺の目をしっかりとみつめて言う。

「後輩ってのにはお前も入ってるぞ。頼りにしてるからな、悠哉。」

ポンポンっとあたまをたたく

深い意味はない単なる彼の癖。

もしかしたらわかっててやってるのかもしれないが

俺が俯いて黙ったままでいると

先輩はにやって笑う。

「うちの後輩には素直じゃない奴が多くて困る」


ととても楽しそうに。

「…っ」


もうほんとに













「…うちの先輩は天然なタラシで困る。」




誰かに聞こえるか聞こえないかの声で悠哉は言った。


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