missing!
仕切り直しだ○学式。
短いスカートにすらりとのびた長い足。
長い金髪はくるくるとパーマがかけられていて、キリッとした、しかし皆を安心させるような自信を持った笑みを浮かばせる美女。
姐御ってこんな感じの人のことなのかなと瑞稀は思った。
「うちのクソ会長と書記が迷惑をかけまして申し訳ありません。
私は生徒会副会長、鷹山凛。
新入生の皆さん入学おめでとう。皆さんにとって此処での生活がかけがえのないものになってくれたらいいと思うよ。なんか困ったことあったら何でも私に相談しな。私がなんとかしてやるよ。」
ニコっと優しい笑顔を添えれば、
キャァァァァアー!!
耳をつんざくような女子の黄色い声。
あぶねーな。鼓膜破れるかと思った。
…でも女子の気持ちわからなくもない。
格好良いし、美人だし頼りになる御姉様!!みたいな。
きっと女子の憧れなんだろうな。
なんにもしなくても生徒の話が聞こえてくる。
「キャーっ鷹山先輩だっやっぱり格好良いなー!」
「聞いた!?この前先輩うちの生徒をかつあげしてた不良3人を1人で倒したんだって!!」
すげぇ…!カッチョイーな!!
「知ってるー!今回はポッキー二本で不良をひれ伏させたんでしょ!?」
はぁ!?
「前はシュークリームでだし!本当に凄いよね!」
ポッキー!?シュークリーム!?どうやって戦ったのか凄い気になるな!!
男子も
「やっぱ鷹山美人だよなー。」
「この前真田告って振られたらしいぞ!?」
「トランプタワー十段出来ない奴はありえないってさ!やっぱ凛さんはみるとこが違うよな!」
ぇえ!?どんな振られ方!?
確かに他の人とみるとこ違うけど!
それでいいのか!?
真田くんもそんな振られ方するとは思わなかったろうに…
真田くんが哀れでならないな。
瑞稀が鷹山の人物像が分からなくなってきたとき
「次、桐生。」
鷹山が桐生と呼ばれた男、王子君にマイクをなげる。
「了解ー。」
桐生がパシッと軽い感じで受け取る。
何でもないようにキャッチしたのが女子のハートをわしづかみしたようで、近くにいた女子生徒が悶えていた。
王子くんは亜稀とか瑞稀たちから目を離し、体育館全体を見回した。
「全校生徒の皆さんさっきは煩くてごめんねー。生徒会会計の桐生雅哉です。挨拶は短めにさせて頂きます。」
そして王子くん改め桐生は言葉を切る。
その間にキャーやら「おー桐生ー!」とか女の声も男の声も聞こえる。
どうやら男女共に人気があるらしい。
その歓声に答えてなのか、マイクの持ってないほうの右手で手をかざして「どもー。どもども。ありがとうありがとう。」とふざけて、終始笑顔。
んー。意外にお調子者キャラなのか?
「新入生の皆さん入学おめでとうございます。この学校は色んな人がいて、先生がいて、施設があって、行事があって面白い学校です。それを俺が、生徒会が、全校皆でさらに面白いものにしていくものだと思っていますので、何か、悩みや生徒会への要求があれば俺じゃなくて蓮夜に〜♪」
へらへら〜っと桐生は蓮夜と呼ばれた男、偉そう男に両手でどうぞのポーズをとる。
「俺かよ。ざけんな。」
苛々したオーラを隠す気もなく、蓮夜は桐生からマイクを奪う。
そして
「新入生。」
と一言呼び掛けた。
そう、呼び掛けただけなのだ。
なのに
キィィイヤァアアア!!!
ウオオオオオ!!
ギャァアアアア!
声でか過ぎて体育館に地響きが。
ちなみに一番最後の悲鳴は瑞稀。
ぜってー鼓膜破れた!痛!!
という悲痛な叫びである。
えなになに何なんだよ!?
こえぇよ皆さーん!!
確かに低くて男らしくていい声だったけどな!?
ちょーっと興奮しすぎじゃありませんか!?
なんか…急激にあたしこの学校でやっていく自信無くなってきた…。
瑞稀が鼓膜が本当に心配になって耳鼻科に本気で行くことを考えはじめたとき
「うるせぇ」
マイクを通して低い、不機嫌な声がきこえた。
その瞬間、騒ぎに騒いでいた体育館が一瞬にして静まり返った。
騒いでいた奴等の大半がキラキラした視線を蓮夜に送っている。
それはそれでついていけない瑞稀である。
なんであんな偉そうな奴が男女ともに大人気なのかさっぱりだ。
基本的にミーハー心の少ない瑞稀はいまいち分からないようだ。
「俺は生徒会長の剣岳蓮夜だ。覚えておけ。この学校で問題起こすな。自分の事は自分でやれ。俺の仕事を増やすな。それだけだ。」
短!!そんなんで良いのか!?
命令ばっかしだな!
他の二人は短いなりにも挨拶っぽくなってたぞ!?
「理事長の息子だからな。」
え、まじか!
だからあんな偉そうにってかめっちゃ普通ではあり得ない自由なかんじの入学式でも先生方何も言わないんだな。
つーかあたしまた声に出してたんだな。
なんかもう慣れてきちゃったよ☆
「てか千秋復活したんだ。」
「最期の言葉がお前についての事なんて許せないからな。」
「それはあたしの台詞だよ!」
あんなん遺言に残されてもたまったもんじゃねぇっての!!
と小声早口で千秋と話していると
「うるさいです。」
振り向けば
隣にいた米澤の顔が般若だった。
周りをみれば、まだ蓮夜の挨拶は終わってなかったらしく、体育館は静まり返ったままだった。
いままでの間は蓮夜がステージの上へ上がっただけのようだ。
蓮夜がステージの真ん中でピタリと足をとめ、生徒達に顔を向け、また話しだした。
「くだらねぇ事で生徒会にたよるな。だが、自分でどうしようもなくなった時、手遅れになる前にいつでも俺のところに来い。生徒会はそのためにあるんだからな。この俺の出来ない事なんてねぇ。…だから安心して俺に任せろ。…以上だ。」
一瞬の間のあと、盛大な拍手と
女子の黄色い悲鳴。
そして男子の「おぉー!」という感心したような声。
「おぉ。」
瑞稀も驚きの声を漏らした。
普通の人がやったら凄い恥ずかしいことになるであろうこの挨拶、セリフ、言動も、蓮夜の容姿や自身有りげな態度や表情やカリスマ性のあるオーラによって様になっている。
なんだ結構やるな…。と瑞稀が蓮夜を見なおしかけたとき、事は起こった。
「水嶋瑞稀!」
突然名前をよばれ蓮夜の方へむくと、蓮夜は指をパチンっと鳴らした。
その瞬間、ザザっと蓮夜の後ろに一列に黒いサングラスに黒いスーツというなんとも怪しい男達がずらっと並ぶ。
ちょぇええ!?1人弓もってんすけど!!
展開が読めねぇ!
蓮夜が弓を持っている男にあたしを指差して指示を出す。
「行け、山崎A」
「山崎Aってなんだよ!名前適当過ぎだろ!」
あたしがツッコミに勤しんでいる間に山崎Aは速やかに任務を遂行していたようで、
あたしに向かって何かが飛んできた。
認識したときにはもうすでに逃げる隙は無くて、
おでこに衝撃が。
その勢いであたしは仰向けに倒れた。
え、あたし、死ぬのか!?
最期の言葉が山崎Aへのツッコミなんて絶対ありえねぇ!!
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