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■壊れてゆく風景(END)
兄に足を踏まれたゆいは、足を骨折してしまったらしい。
しばらく安静にということで、家にいることになってしまった。

家に帰ってきた兄はゆいの足を見てはびっくりすると、ものすごく謝られてしまったが、ゆいは仕方ないと思っていたので「大丈夫だよ♪」っと言った。

お兄ちゃんが最近人に触ってはいけないと忠告されていたが、もしかしたらこの力強さが理由なのかもしれない。

しかし、兄の事も不安なのだが、ゆいにはもう一つ不安があった。

ゆいはずっと兄に隠していたことがあった。

学校で人気者になった兄に気がある女の子は沢山いた。
それは嬉しかったのだが、学校でお兄ちゃんと仲良くすると、その子達にはどうもよく思われないらしい。

直接ないじめはなかったが、ゆいは女子に陰口を言われるようになっていった。

はじめはあまり気にしなかったが、だんだんとひどくなり、学校での兄の接し方がいまいちわからなくなっていった。

今まで兄に聞かれないように間際らしていたが、ゆいが学校にいないともしかしたら聞かれるのではないかと心配になってしまう。

そして今の不安定な兄が聞いてしまうとどうなるだろう。

兄はゆいのことにはかなり敏感だ。

もしかしたら女子に同じことをするかもしれない。

それが心配だった。



今度はあっさりと誕生日を迎えるが、兄も疲れているようで、今回は起きることはなく次の朝を迎える。


早めに学校に行こうとする兄を見て、たまたま眠れなかったゆいはゆっくりと廊下を進んで兄のもとへゆくと「お兄ちゃん、お誕生日なんだし休んだ方がいいよ」っと声をかけるが、ゆいが怪我したことがそうとうショックなのか、首を横に振ると、しばらくあまり痛々しいゆいは見たくないようで、スッと学校にいってしまった。

その少し見えた肩にかかっているランドセルはいつもよりボロボロになっていて、なんだか不思議に思う。

しばらくすると、母が起きてきて、「ゆうくんは?もう行ったの?!」っとゆいに声をかける。

「うん…」っとゆいがいうと、「そうなの…ちょっと今日は心配ね」っといい、母は洗濯物を運んだ。

ゆいは再び部屋に戻ると、ベッドに座って何をしようかと考えていると、早起きしてしまったのが効いたようで、すぐに眠りに落ちてしまった。

それから数時間寝た後、「ねえ…ゆいちゃん…夜、ゆうくんの部屋うるさくなかった?」っと奮えながらゆいを起こしては聞いてくる。

「んえ?…」っと目を覚ますが、そんな音は全く聞こえなかったので、「ううん」っと首を振る。

母は青ざめたまま「じゃあ…なんなのかしら…」っと動揺しながら、隣の兄の部屋に入った。

ゆいもゆっくりと兄の部屋の前に進むと、兄の部屋はものすごく荒れている。

椅子が壊れ、ベッドも傾いてしまい、あるものあるものすべてが壊れている。

「もしかして…」っと母は台所に向かうと流し台を見ると壊れたコップが一つ置いてある。

「どうしたのお母さん…?」っとゆいは母に声をかけるが、何かを思い浮かんだ様に顔が青ざめている。

すると、我が家の電話がジリジリと鳴り響く。

なぜか母は固まったままなので、ゆいが受話器を取ると「もしもしっ」っと電話に出た。

『桃咲さんのお宅でしょうか…?!』っと、ちょっと落ち着こうとしつつも慌てたような声がする。

どうやらゆいの学校の先生からかかってきたようで、急いで学校に来て欲しいとのことだった。

その事をお母さんにいうと「きっとゆうくんが……」っと不安定な様子なので「行こ!!ゆいも行くから!!」っと母の体を押す。

「そ…そうよね…行かないと…」っと母は青ざめたまま車に向かうと「ゆいちゃんは残ってていいのよ??」っというが、それだけは嫌なので「ゆいもいく!!」っと、車に乗せてといわんばかりに母の体をポンポンとする。

そして学校につくと、学校は立入禁止のテープで閉鎖されて救急車が何台も止まっている。

「あの…」っと母が学校につくと、先生は「なんであんな子野放しにしているんですか?!?!」っと怒ったように母にいう。

母はビクッとすると、ゆいが必死に足を引きずりながらテープの中を急いでくぐり、学校の中に入ると、ゆいの教室から物凄い血が飛び散っている。



ゆいが教室の中を覗くと、兄がただ1人。



教室の隅でうずくまっていた。

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