■平和な春休み
いつの間にか学校も終わってしまい、一度バラバラになったゆうくんも、3日間苦痛でもがきつつもいつの間にか再び1週間で、体がくっついたのか、はたまたまた手足が生えたのか、どんなふうに治ったのか謎だが完全に完治していた。
そして祐太くんのほうも、虐待報告を受けた親は祐太と会うのは難しくなり、いろんな手続きを済ませては改めて、おじさんの養子に引き取られることになったらしい。
そういえばおじさんの苗字ってなんだろう…、たぶんお母さんの旧名かな?でも祐太くんの苗字はもともとお母さんの旧名だったと思うし、ある意味ちょうど良かったのかもしれない。
そんなことを考えながら春休みを満喫していると「んーーーーー」っとゆうくんがのびのびと体を伸ばしながら何かを書いている。
「お兄ちゃん何書いてるの??」っとゆいが兄の机をのぞき込むと、何か文章が長々と書いてあり、サッと素早く両腕で隠した。
「だめ!これはまだみちゃだめなの!」っと、ゆうくんがつぶやくと、「ええー!?なになにー!?気になるんだけどー!!」っと、紙をパッと取り上げると、なにやら小説が書かれている。
「ふむふむ…」っとうなずきながら心で読み上げると、「読めない漢字でいっぱいだけどたぶん主人公が特殊能力にめざめた!!!!」っとゆいは叫び、「やめてよぉおおおお!!!」ってめちゃくちゃ兄は恥ずかしそうにしている。
「ほら、最近祐太の話しきいてたらさ。
俺みたいなのが実はいっぱい産まれてきてるのかなって思ったら、なんだか安心しちゃって…ちょっと心に余裕が出来たから新しい趣味でも作りたくてその…これはまだ…今さっきはじめたばかりのやつだから!」
っと必死に恥ずかしさをまぎわらすように兄は訴えている。
そんな兄を見ては思わずフフフっと笑ってしまう。
もしかしたらこんなに心に余裕が出来た兄ははじめて見たかも知れない。
謎だったことが少しずつ明確になってきてるし、同じ人が山に沢山いることを知ってなんだか安心しちゃってるのかもしれない。
「でも不思議なんだよな…、なんでみんな山から降りてくれないんだろ?俺みたいなのって成長しちゃうとそんなに危険なことなのかな??」っと、疑問をつぶやき始める。
「そうだね、でもだいじょうぶだよ♪ゆいたちいじめだって閉じ込められたって襲われたって全部乗り越えたんだから♪
これからなにがあってもきっと大丈夫♪」
っと言うと、「うん♪」っと兄は返事をする。
そして再び兄が小説を書き始める。
するとパキッと音がして、コトっとものが落ちる音がする。
「あちゃー、なんでだろ?また折れた…」っと兄は落ちたものを拾う。
「どうしたのゆうくん?」っとゆいが聞くと、「鉛筆だよ、何回も変えてもすぐ折れちゃうんだよね…」っと兄は返す。
「鉛筆は折れやすいしシャーペンでもいいんじゃない?」っと言うと、ゆいは兄にシャーペンを渡す。
兄は「ありがとう」っというとシャーペンを受け取り、空想旅行へと旅立つために、黙々と紙に書き始めた。
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