■正しいこと
俺は父親の顔はほとんど知らない。
それでも3、4歳の時にすこしだけあったことがあって、顔の雰囲気は少し覚えている。
父といってもみんながいう、家族の為に働き、家族を守る父とは違う。
みんなが言う父は大きくて立派で心強そうなものに対し、俺の父親と名乗るその人は決して籍をいれたわけでもなく、ただひたすら母に子供を産ませるだけにいたようだった。それでも母よりも誰より綺麗で、父親とは程遠い、桃色の綺麗な髪をした、どうみてもかわいらしい小さな女の子だった。
そんな特殊な父は、周りにはよく思われていない存在だった。
母もほとんど父の言いなりのような存在になっていた。
ほかにも兄弟は沢山いたが、ほかの兄弟のほとんどは残酷に山の住民に殺されては、唯一安全と判断された俺だけを連れ、俺が5歳になると、父を恐れていた母と山に住んでいた者達みんなと一緒に山から逃げることになった。
それから母は、同じ山に住んでいた男の人とはじめて結婚した。
それでも母にも再婚した新しい父親にも、俺がその特殊な父親の子供だということをあまりよく思っていないらしい。
俺には魔物がとりついていると言われ、不幸なことが起こるたびに俺は動けないように縛り上げられると、たくさん体を打たれ続けていた。
そんなことが2年続いたある日、俺はあいつに出会ってしまった。
ゆいとゆうを見た時は、ほんとうにびっくりした。
ふたりとも、昔の父にすごく似ている。
そして同時に俺は両親の顔を思い出す。
昔から俺の父親と兄弟は最悪な存在だと教えこまれていたため、俺はすぐに身を守る為にゆうをいじめはじめた。
はじめは身を守る為にやっていたのだが、両親がいつも俺にやっていたことなので、いじめがいけない事だと全く知らなかった。
ゆうが学校にこなくなると、今度はゆう以外にも手を出すようになってしまった。
人をいじめてる時間は俺にとっては家でのストレスを発散する時間になってしまったのかもしれない。
そして、先生が報告したらしく、俺がゆうをいじめてることを両親に知られた。
すると両親はむしろ歓迎するかのように、「その調子でその悪魔から周りを守ってあげるんだ」っと、はじめて両親に誉められた。
俺はそれが正しいことなのかと思い、嬉しくなってしまう。
しかし、両親がゆうの存在を知ってからというもの、ゆうが学校に来るだけで、俺は両親から体罰を与えられるようになっていった。
そんなある日、俺の故郷が感染症やらでいつの間にか大変なニュースになっていた。
俺は、親がいないあいだにすかさず、残った兄弟が無事なのか、写真を探しては住民を一人一人確認していくがさすがに見えない。
そんなときにふと思う。
ふたりももしかして兄弟のように殺されない様に、あそこから逃げ出してきたんじゃないのかと…。
それでも本人には聞けず、遠まわしにゆいと仲が良い愛梨に写真を託したりと遠まわしなことになってしまった。
そうしてはじめは俺は魔物にとりつかれているから痛みつけられて当たり前と、そう思っていたが、保険の先生や、ゆいと話していると、だんだんとそれが疑問になっていった。
俺は今まで両親に言われた通り正しいことをしていたつもりだった。
ゆうは父と同じ最悪な存在だと、だから学校にこさせないように守っているだけなのに、何が変なのだろうと。
それでもだんだんとゆいを見ていると、このままではいけないような、そんな気になっていったんだ。
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