■閉鎖地帯
2人が向かっている場所は明らかに一緒だった。
「もしかして、お互い同じ事考えてるのかな?」っと俺に修斗が声をかけてくる。
相変わらず俺は黙っていると、「むぅ…ちょっとくらい構ってくれたっていいのに… 運転手さんには普通に返事したのにー」っと、だんだんと修斗は拗ね始める。
「わかった、じゃあ一緒に協力して忍び込もう?
前入った時は入口ですぐ追い出されちゃって…今度こそはうまく行きたいんだよね」っと言うと、俺の手を引っ張りはじめる。
そして閉鎖されてる場所に近づくと山の上の方を2人で見上げた。
「みて!すごい雪が積もってるよ!ここよりもっと寒いから注意しようねー」っと修斗が呟く。
俺はこくりと頷くと、「やった、初めて反応してくれたね♪」っと修斗は嬉しそうに言った。
「警備の人がいるから見つからないようにくぐり抜けていこう、見つかったら2人で違う方向に逃げるんだ、いい方法でしょ?」っと、言うと2人で立ち入り禁止の紐をくぐっては、人に見つからないようにゆっくり進んだ。
森の中に入ると修斗は初めての場所ではないようにグングンと進んでゆく。
もしかしたらこの子、この場所に慣れてるのかな?
前1度来たって言ってたけど、すぐに追い出されたって言ってたのに…。
しばらく進んでいると、更にもう一段階の立ち入り禁止の紐があり、警備の人がたくさんいる。
「うーん…こっから難しそうだね…」っと修斗がいうと、俺は警備の人たちを観察する。
「右側の人、眠そうにしてる
突破するならそこからの方がいいかも…
きっと見つかっても反応は多少遅くなると思うよ」
っと、俺が頭に浮かんだ事を口に出してみると、修斗がなにやら俺を見てはすごく驚いた顔をしている。
「すげー、お前…頭良さそうなんだな」っと修斗が言うと、俺はまた黙っては修斗より前へ進んで歩きはじめる。
「それじゃぁいっせーのっで走るぞ?」っと修斗が俺に問いかけると、俺はこくりと頷いては構える。
「それじゃっ…いっせー…」
っと修斗が言おうとした瞬間。
ガバッと誰かが俺達の体を後ろから捕まえる。
俺はびっくりして震えていると、そのまま抱き上げられてしまう。
「おい、また子供が入ってきたぞ!ほんと多いよな!」っと、どうやら後ろにいた警備の人に気づくことができなかったようでそのまま捕まってしまった。
そして捕まえた俺達の腕を掴んでは、そのまま動かないようにすると地面に下ろした。
「お願いっ!中に妹がいるんだ!会わせてくれよ!」っと修斗が必死に警備の人にお願いしている。
どうやら閉鎖地帯に妹が置き去りにされているらしく、助けにこようとして、ここまで1人で来たようだ。
「また君か、妹さんは出られる状態じゃないのは自分でも分かってるだろ??ダメだダメだ」っと警備員が修斗に言うと、俺の方をちらっと見る。
「君は…、どうして来たんだ?
もっと小さいじゃないか…こんなところまで来て…危ないよ?」っと、そのまま俺にも注意する。
そんな状況に俺はビクビクと怯えていると、男の人が1人、こっちにやってくる。
「どうしたんだ?」っと男の人がこちらにやってくると、「いえ、また子供が入り込んできただけです!すぐ連れ戻しますので!」っと、どうやら男の人は上の立場の人のようで、警備の人が敬意を持つように言うと、俺達を連れていこうとする。
「なんでダメなんだよ!俺の妹なんだぞ?!」っと、修斗は必死に抵抗しようとするが大人の力には勝てない。
俺も仕方なく連れていかれると、「待ちなさい」っと男の人が1度警備員を引き止める。
「どうなされましたか?」っと警備員は体を男の人の方へ向きを戻す。
男の人は険しい顔をしては、「その桜色の子に触るんじゃない!」っと注意すると「!…すみません!」っと、警備員は俺をつかんでいた手をパッとはなした。
すると慌てて男の人は「今のご無礼をお許しください!!」っと青ざめた顔で膝まづいては、俺に頭を下げる。
そんな光景に、周りも俺も不思議そうにする。
「あ…あの… そんな… 大丈夫です…」
っと俺もついつい焦って男の人に声をかけると、「あの…今日は何のご用でいらっしゃったのでしょうか…??」っと、男の人は怯えたように俺に問いかける。
「自分はその…、生まれた場所がここだから…心配になって…
それより、この子の妹、どうして連れていけないの?」っと、俺は問いかけ返す。
「実はその…黒い霧に飲み込まれてしまって…外に出すのは危険かと…」っと返事をしてくれると「そうなんですか…」っと、俺は男の人の顔を見つめる。
「申し訳ございません!入ってくれるのは全然構わないのでよかったらどうぞ入ってください!」
っと、男の人は俺を歓迎するかのように入口を作る。
「あの、俺はいいから彼を…」っと、俺は修斗の方を見ると、「それはできないのです!何より危険なので…」っと男の人は答える。
自分だけ入るのは凄く気が引けるので「そっか…それならいいです」っと俺はいうと、警備員さんの元へ戻り、諦めて閉鎖地帯を出ていく。
警備員さんは「それじゃー、気をつけてかえるんだよ?」っというと、元の場所へ戻っていった。
すると、修斗は俺の服を掴んでは「お前、あいつらのなかまだったのか?!」っと怒ったようで俺に怒鳴ってくる。
思わず俺はビクッと震え上がる。
「もういい、お前とは仲良くなれそうだったのに…敵だったんだな…」っと言い、俺なんか見たくないかのように、修斗は走り去ってしまった。
胸がなんだか痛くなる。
なんであの人は俺の扱いが慎重だったのだろう、わからない。
…帰ろう。
俺はそのまま、近くのバス停まで歩いていく。
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